-
かわいいイラストの近現代史年表@昭和初期の少年ヴィジュアル百科事典
国家総動員法が制定され、いよいよきな臭くなってきた昭和13年に刊行された、少年向けヴィジュアル百科事典に載っている「現代の繪話」というタイトルの、明治初頭から昭和初期にかけてのカラーイラスト年表。 子どもたちの興味を惹くためだろう、かなりトリビアルなネタも取り交ぜてあって、かわいらしい彩色の絵も親しみやすく、面白い仕上がりになっている……が、しかしこうしてみると、ひと昔ふた昔前の日本は結構物騒な世界だったんだな、と改めて感じさせられる。 この本全体が、装幀デザインからして「たのしく国威発揚・戦意昂揚」を目指した編集方針なのがみてとれる、ある意味「わかりやすい」方向性の百科事典なのだが、図版が(巻末の政治家や軍人などのおエラ方顔写真は別として)全般的にかわいい感じで、なかなか魅力的。 それにしても、この絵を眺めて眼をきらつかせていた少年少女たちが、その数年後にどのような人生を歩んでいたのかは知る由もない。ただ、少なくともこの当時に思い描いていた将来とは、かなり違ったものであったろうことは、想像に難くない。 文化によって得られたものは千年、二千年経って、その価値をいよいよ増して残り得る。しかし戦争によって得られたもののうち、千年経ってなお残っているものは、「破壊の傷痕」と「消しがたい遺恨」がほとんどだろう。 それでも為政者が敢えて戦争に踏み出す選択肢を決して棄てようとしないのは、短期的には自身の立場や権益をまもったりつよめたりするのにおおいに役立つことを知っているからだろう。殊に、自国内や自身のまわりに、国民の視線を一刻も早く逸らさせたいような問題を抱えている塲合には。
少年百科寶鑑 昭和13年(1938年) 昭和13年(1938年) 網版刷り図版研レトロ図版博物館
-
光電スイッチ式自動ドア装置@昭和初期の電機製品カタログ
東芝の前身企業のひとつ東京電氣の製品開発部門の研究所が昭和十年代に出したカタログに載っている、光電スイッチを採用した自動ドア装置の図。建具そのものは木製枠のガラス框扉に見える。感知部の光源は説明文を読んでも「特殊電球」としか書かれていないのでよくわからないが、赤外線ではなくて可視光と思われる。 我が国の自動ドアの歴史について安直に調べよー、とググってみても、「建物には当時の日劇前の東芝営業所玄関に、光線スイッチ起動による自動ドアが設置され、銀座マンの話題を呼んだが大衆にとっては、高嶺の花であった。」という某大手メーカーの言説(現在は削除されているようだ)の一部がコピペされているばかりで、その姿形などはどこにも見当たらないが、東京電氣の営業所か研究所に併設されていたのだろうショウルーム内部らしきこの写真のものに、恐らくは似通った装置だったと思われる。 あるいは、これこそがその「営業所玄関」の写真なのかもしれない。入口と出口とが分かれているところからすると、どうやら一方通行だったようだ。手前にある背の低い円柱の内側にセンサが仕込まれているようだが、脇に鎖が張られているのは多分扉が手前側に開くので、お客がそれにうっかりひっぱたかれないようにするためではないかしらん。 今では当たり前のようにそこら中に設置されている自動ドアも、国内で普及したのはようやく昭和三十年代になって、というから、戦前の実物の詳細な図版はやはり珍しいといえるだろう。 #レトロ図版 #自動ドア #光電スイッチ #光センサ #電機製品 #昭和初期
研究所製品綜合型録 昭和13年(1938年) 昭和13年(1938年) 網版刷り図版研レトロ図版博物館
-
こどもの発育一覧表@昭和初期の婦人雑誌附録
出産・育児をテーマに若い母親向けに編まれた、昭和十年代の婦人雑誌附録に載っている乳幼児の「標準」的な育ち具合の目安を図解した表。かわいらしい絵柄が、ともすればセンシティヴにもなり得る家庭医学情報を親しみやすく解説するのに一役買っている。母子の服装やおもちゃなど、当時の上・中流家庭風俗も垣間見られてたのしい。 こうした冊子が女性雑誌の附録として企画されたのは、大正期から格段に増えていた核家族が日常的に親世代からの経験を引き継ぎづらい状況にあったから、というよりもむしろ、素人ではなく専門家によるちゃんとした知識に基づいて産み育てたい、という欲求がうまれていたからかもしれない。 #レトロ図版 #育児 #発育 #こども #おもちゃ #婦人雑誌 #家庭医学 #昭和初期
妊娠十ヶ月と育兒十二ヶ月寳典 婦人倶樂部第二十一卷第二號附録 昭和15年(1940年) 網版刷り 洋紙図版研レトロ図版博物館
-
艤装詳細図いろいろ@昭和初期の飛行機図面集
大東亜戦中に出された、一般向け……というよりは航空機マニア向けの詳細図面あれこれ。エンジンやそれに連動するプロペラ部分、着陸/着水装置、胴体や羽の内部構造などが精密かつリアルに描かれている。 国内外の資料をかき集め図面を引っ張るまでに相当のご苦労があったらしく、昭和十五年創刊の雑誌を手がけた面々が始動当初から企画しながら刊行に漕ぎ着けるまでだいぶ遅れたらしいが、それも無理のないこと、と納得できる素晴らしい仕上がり。まるで活字のようにきちっと揃っている解説の文字も、拡大してみればすべて手書きであることがわかる。 きなくさい時代の本ゆえに、全体としては軍用の機械が多いのだが、旅客機など民生用のものもカヴァーされている。なにしろこの細密さは、図版好きを惹きつけるものがある。 #レトロ図版 #飛行機 #航空機 #メカニックイラストレーション #艤装 #昭和初期
世界飛行機構造圖集 昭和17年(1932年) 昭和16年(1941年) 網版刷り図版研レトロ図版博物館