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Bene Gesserit “Postcards From Arrakis”
ベルギーのInsane Musicに所属しているBene Gesserit第2弾は、1982年リリースのセカンド・カセットの再発盤です。彼等のバイオグラフィーについては、以前にも書いてありますので、そちらをご参照下さい。今回の参加メンバーは、Benedict G.ことNadine Bal(Vo, Words), B. GholaことAlain Neffe (Rhythm Section, Syntf, Strings, Bulbul Tarang, Sax, Words, Sampler)に加えて、M.A.L.こと Daniel Malempré(B [A2], G, B [B1])がゲスト参加しています。それで、本作品では、A面7曲/B面6曲が収録されており、セカンド・カセットの再発であり、極初期の貴重な音源と言えるでしょう。それでは、各曲について、紹介していきます。 ★A1 “N.O.T.H.I.N.G” (2:46)は、カシオトーンのリズムに、不明瞭なストリングスや声が乗り、更に無機質なVoが絡む曲です。 ★A2 “Funny Toys (dedicated to friends) (second mix including bassist guitar)” (3:00)は、マシンリズムとシンセベースとBとシンセのミニマルから成る曲で、そこに自由に飛び回るVoが乗ります。やっぱり、M.A.L.のBが効いていますね。 ★A3 “Words” (4:30)では、淡々と続く機械的リズムに、囁き系のVoが絡み、そこに多重録音されたSax等のミニマルなフレーズが入り込んできます。既に、Bene Gesseritの作風が確立されています。 ★A4 “She Sells Sea Shells On The Sea Show” (3:30)は、スローなテンポで、ミニマルなシンセとリズムマシンにVoが乗る曲で、彼等の曲としては、ポップ過ぎて、ちょっと異色ですね。SaxやGも入ってます。 ★A5 “Dans La Crypte ...” (3:08)は、ミニマルなシンセベースと微かなリズムマシンの上で、SEのようなVo、シンセやサンプラー等の音が飛び跳ねる曲です。 ★A6 “Rednet Em Evol” (1:07)は、自分達のポップソングを逆回転させた実験的な小曲です。 ★A7 “My Brain Is My Worst Friend” (2:00)は、強力なリズムマシンに、シンセやディレイ処理された色んな物音等が絡みつく曲で、こう言うのも、彼等独自の路線でしたね。 ★B1 “Moki-Toki Oka-Owa” (6:20)では、ミニマルなBのフレーズがスローで不穏な雰囲気になり、ディレイ処理されたVoが更に電子ブルース化させています。 ★B2 “Do What You Have To Do” (1:35)では、懐いDR-55のリズムに乗って、フェイザーを掛けたVoとシンセ音が良い塩梅です。 ★B3 “Gloria” (4:00)は、マシンリズムに簡素なBやGが乗っていき、シアトリカルなVoが特徴的な彼等の初期代表曲です。 ★B4 “Be Happy !” (2:45)は、不明瞭なベースラインの上に語り口のようなVoが乗り、その他色んなサンプラー音が色を付ける曲で、BenedictのVoを堪能できます。 ★B5 “Turtle Bridge” (3:15)は、ノリの良いリズムマシンに、BやGが不明瞭なフレーズを奏でていますが、メインはシンセによるふにゃふにゃしたメロディですね。 ★B6 “Ce Matin ...” (1:44)は、シアトリカルなVoの独唱から成る曲で、多分リアルタイムで色んな処理をしているのだと思います。 このレコードにはミニインタビューみたいなものとハガキが付いてますが、特に、ミニインタビューで、B. Ghola (Alain Neffe)が「Bene Gesseritにはエモーションが重要だ!」と答えているのですが、無碍なるかな、その通りだと思います。Alain Neffe自身が、複数のユニットをやっていたのですが、特に、実験ポップ・ミュージックにその「エモーション」(多分に、Benedict G.[Nadine Bal]よる)をぶち込んだのが、このBene Gesseritであったのだったと思います。また、このセカンド・カセットで、既にその萌芽を感じ取ることができますね。その意味でも、Alain Neffe(或いはベルギーの地下音楽)の1980年代の活動に興味がある方には、本作品はマスト・アイテムです❗️ クレジット A1 “N.O.T.H.I.N.G” (2:46) A2 “Funny Toys (dedicated to friends) (second mix including bass guitar)” (3:00) A3 “Words” (4:30) A4 “She Sells Sea Shells On The Sea Show” (3:30) A5 “Dans La Crypte ...” (3:08) A6 “Rednet Em Evol” (1:07) A7 “My Brain Is My Worst Friend” (2:00) B1 “Moki-Toki Oka-Owa” (6:20) B2 “Do What You Have To Do” (1:35) B3 “Gloria” (4:00) B4 “Be Happy !” (2:45) B5 “Turtle Bridge” (3:15) B6 “Ce Matin ...” (1:44) https://youtu.be/57iujMtJH4M?si=5DX7hPEeS1tX0hz6 #GeneGesserit #PostcardsFromArrakis #EverythingIsShitRecords #DingDongRecordsAndTapes #Reissue #Remastering #Belgium #SynthWave #Experimental #B.Ghola #AlainNeffe #BenedictG. #NadineBal #M.A.L. #DanielMalempré
Synth Wave / Experimental Everything Is Shit Records (Ding Dong Records and Tapes) 5480円Dr K2
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Interior “s/t”
今でも覚えているんですが、このInteriorってバンドが出た時に、ある雑誌の音楽評で「良くもこんな恥ずかしいバンド名を付けることができるなぁ。音も推して知るべし」みたいなことが書かれていて、それで、気にはなっていたんですが、その時に購入するのは止めました。それで、何も聴かずして文句を言うのも何だから、購入しようと思って買ったんです。やはり気になったのは、プロデューサーが細野晴臣氏だったこと。そして、ジャケのデザインが如何にも洒落乙で、自分には不釣り合いだなあと言うこと。まあ、それは置いておいて、先ず、Daisuke Hinata / 日向大介 (Synth-Kbd, Piano), Eiki Nonaka / 野中英紀 (Synth-Strings, Vo), Mitsuru Sawamura /沢村満 (Sax, Kbd), Tsukasa Betto / 別当司 (Drs, Perc)の4人です。Berklee音楽大学に留学していたメンバー4人はYMOの”BGM”に触発されて、日向を中心としていたバンドEyesやSnowを、Interiorの前身として組み、その発展解消する形で、Interiorを結成しています。その活動が、細野晴臣氏の目に留まって、サポートを受けて、本作品をYen Recordsからリリースしています。Yen活動期間後、1985年に、沢村と別当が脱退しましたが、New Ageの提唱者William Ackermanに見出され、彼のレーベルWindham Hill Recordsより、再度ミックスし直して、バンド名もInteriorsと複数形にして同名のアルバムを世界的にリリースしています。コンピ”Windham Hill Records Sampler '86”に参加して、収録された”Hot Beach”がグラミー賞のNew Age Producer Artist部門にノミネートされています。1987年に、セカンド・アルバム”Design”をリリースしますが、その後、自然消滅しています。なお、沢村はバンド脱退後も、高橋幸宏や立花ハジメなど様々なアーティストの作品に参加しています。 それで本作品の内容なのですが、一言で言うならば「癒し系」ですね。余計な音を排して、ミニマルで柔らかい電子音から成るインスト曲が主体を占めている作品です。このNew Age Musicなるモノが良く分からないのですが、アンビエントやミニマルとどう違うのか?その辺りの線引きで評価は分かれそうですね。私は、これを聴いて、復活直後のM.B.を思い出しました。確かに、彼の音楽はメロディもリズムも無いのですが、New Ageっぽいと言われて、低評価でした。ただ、そのような音楽とは形態は違うのですが、確かに心を落ち着かせそうな音楽ではあったと思います。逆に言うと、エッジの無い音楽と言っても良いかもしれません。そう言う意味では、このInteriorも何の毒もない音楽です。元々が、YMOの”BGM”に影響を受けたとして、このような音楽に行き着くのは、私にはちょっと理解し難いように思えます。”BGM”は各人の趣味を徹底的に押し出した、ある種実験的なアルバムだったからです。そこら辺に齟齬を感じますねぇ。それはそれとして、グループ名からもサティーの「家具の音楽」を目指したのかなあとも思います。まあ今となっては闇の中ですが。でも偶には、こう言う音楽を掛けっぱなしにしてもいいんじゃないでしょうか?そんなアルバムです。 https://youtu.be/qvCpWBVtYTI #Interior #YenRecords #WRWTFWWRecords #Reissue #NewAgeMusic #Electronica #Synthesizers #Drums #Sax #DaisukeHinata #EikiNonaka #MitsuruSawamura #TsukasaBetto
New Age / Electronica WRWTFWW Records (Yen Record) 3300円Dr K2
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19 “Sound Track”
日本が世界に誇る実験バンド19 (Juke)の4枚目アルバムにして最終作(実はその後1987年にもCDが1枚出ている) “Sound Track”の登場です。これも湯浅学氏の円盤からの再発盤となります。もうバイオグラフィーとして書くこともありませんのでーー大竹伸朗氏のその後の活躍は各自調べてくださいーーここでは省略させて頂きます。サードアルバム”Pieces”での音楽性の大きな転換の後にリリースされた本作品は、2枚目までのロックのフォーマットと反復/ズレ/ループ音からなる作業的フォーマットが結果的に両方とも上手く取り入れられた方法で作られているようです。そう言う意味では、19のメンバー達としては一つの「完成形=行き着いた先」だったのかも知れません(勿論、これが大竹氏の想定していた完成形とは言いませんが)。このレコードを大竹氏は「風景をテーマにしたポップス」と評しています、正直、私にはこの言説に諸手を挙げての大賛成とは言えませんでしたが、楽器や非楽器を使い、それを「曲」に落とし込んだのが、ポピュラリティーだったのかも知れません。曲も前作とは異なり、3分程度のものが殆どで、ちゃんとタイトルも付いている点も、一種の「ポップス」なのかも知れませんが、これは必然であったと想像します。音的には、割とハッキリとした反復ビートを刻むドラムとそれと関係する/無関係な反復をする楽器/非楽器音の演奏からなっており、個人的にはDomeの一連の作品を思い浮かべました。しかし、Domeがインダストリアルなマテリアリズム志向でしたが、本作品は確かにマテリアリズムも感じるのですが、「音楽」のフォーマットに戻った部分もあるように思えます。それが「風景をテーマにしたポップな」かどうかは良く分かりませんが、、、。。音としてはかなり制御された印象をうけますので、19 (Juke)初心者の方でも聴き易い作品かも知れませんね。この機会に是非とも購入して聴いてみて下さい❗️ B面 https://youtu.be/a9Bcz2h68Pw #19 #Juke #SoundTrack #Enban #Reissue #SpecialPackage #Experimental #Music #Noise #Pops #ShinroOhtake #TakijiNomoto #ToshiakiTohyana #YokoOhta #FinalAlbum #Repetition #Drums #Guitar #Bass #Violin #Tapes
Experimental Music, Noise Enban (self release) 5000円Dr K2
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19 “Pieces”
とうとう入手しました。40年振りの19 (Juke)のサード・アルバム”Pieces”です。再発にあたり、特殊包装され、しかも大竹伸朗氏によると思われる特大ポスター付きです❗️このアルバムが出た当時は、ある音楽誌の評で「ビートもなく、つまらん」みたいなことが書かれていて、その為か、当時は購入するのを躊躇った経緯があり、今回の再発は嬉しい限りです。大竹氏と円盤の湯浅学氏のライナーノーツがあるので、この作品の背景などを理解する上で大変有り難いです。バイオグラフィーは前回書きましたので、ここでは省略させてもらいますが、少しだけ加えておきます。大竹氏曰く、セカンド・アルバムまでは「ロック」のフォーマットでやってきて、それなりに成果もありましたが、ここにきて、バンドとしての担当も固定してきていたので、新たな展開の必要性と危機感をメンバーも感じていたようです。それで、今回(サード・アルバム)は、非楽器を用いた演奏とその繰り返し(反復)と言う方法論に至ったとのことです。それで、私が、当時の音楽評か何かで読んだ記憶では、非楽器による音を録音したカセットテープを切り刻んで、それを繋ぎ合わせて作ったループ音を元にしたと言うことでした。それが正しい認識だったかどうかは定かではないですが、今回のサード・アルバムでは、今までと大きく異なり、曲も全部で3曲のみA面2曲, B面1曲)となっています。そして、特にB面に顕著なのですが、ループする音が段々とその共鳴音に埋没していき、遂には不明瞭な音の風景となってしまう展開です。A面もA1はまだドラムの音も明確であり、恐らくはプリペアード・ギターなどの楽器の合奏から成りますし、A2では、ズレていく複数のドラム演奏とループ音らしき音から構成されています。ここに来て、19 (Juke)は、「ロック」のフォーマットから大きく外れて、音を組み立てると言う「作業的」フォーマットに進んだものと考えます。そんな大胆な変化と危険性を孕んだ本作品は19 (Juke)のターニングポイントだったのでしょう。この点については、大竹氏がロンドンで体験したDomeとのコラボ・パフォーマンスと関係しているのかも知れません。そんな19 (Juke)の意欲作を是非とも体験してみてください❗️これが最後のチャンスかも知れませんよ! A面 https://youtu.be/viUgklgpIbA #19 #Juke #Pieces #Enban #Reissue #ShinroOhtake #TakijiNomoto #ToshiakiTohyama #YokoOhta #Experimental #Noise #Repetition #ズレ #PreparedInstruments #Drums #Guitar Bass #Violin
Experimental Music, Noise Enban (self release) 4200円Dr K2
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Tristan Disco “Demonstration Takes and Retakes”
1980年代、日本でオルタネイティブ(90年代のオルタナではない)の狂騒が席巻する中、大阪Vanity Recordsからアルバム”Background Music”を出していた東京のバンドBGMの首謀者白石隆史さんが新たにバンドを始めたとの噂が密かに流れていたのですよ。一つが前回も紹介したMLD、もう一つがこのTristan Discoです。どちらも「リズム」に焦点を当てた音楽だったのですが、今回、MLDとは違うアプローチを取ったTristan Discoのオリジナル・トラックとリミックスされたトラックからなるアルバムが、リリースされました。メンバーは白石さんとSonohara Junに、DrにSuyama Takakiとなっています。リミキサーはKrikorとCivilistjävelです。先ずもって、これは33回転なのか?45回転なのか?がわかりません。33回転だと初期Swans並みに重いし、45回転だとファンキーに聴こえる。う〜む、やっぱり33回転かなあ?手数の多いドラムにスラップすら入るベースが曲の屋台骨を作り、そこに様々な音(ギターのカッティングやヴォイス、シンセ、テープ音など)が挿入されると言う音楽構造になっています。MLDがミニマリズムかつ禁欲的なのに対して。Tristan Discoは派手で、享楽的であると言えるかもしれません。リテイクのヴァージョンも敢えて不明瞭化しており、そう言う解釈もあるのか!と驚きました。皆さんも33回転か45回転かで悩んでみて下さい! “Be On The Decrease” https://youtu.be/V2wkldycHxE #TristanDisco #DemonstrationTakesAndRetakes #CamsoleRecords #TakashiShiraishi #Krikor #Civilistjävel #Retake
Alternative, Post Punk Camisole Records 2980円Dr K2