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Felix Kubin “Teenage Tapes”
独実験ポップ界の天才Felix Kubin (フェリクス・クビン)の10代で宅録していた曲を集めたセルフ・コンピ・アルバム、その名も”Teenage Tapes”を紹介します。Felix Kubinのバイオグラフィーは、以前に書いたかもしれませんが、再度、生い立ちから紹介していきたいと思います。本名Felix Knothで、独Hamburg生まれの電子音楽家/作曲家/キュレーター/サウンド-ラジオ・アーティストで、自身のレーベルGagarin Recordsも運営しています。8歳の時からピアノと電子オルガンを習っており、1992-1996年にハンブルク応用科学大学にて、ドローイング/サウンド・インスタレーション/ヴィデオ/アニメーション映像について研究し、1995年にはDAAD研究資金を獲得し、蘭EnschedeのHogeschool voor de KunstenのArtEZメディア・アート学部に1年間留学しています。話しが前後しますが、彼は1981年、12歳の時に、シンセとオルガンとヴォイスとドラムマシンで、最初の曲を作っています。その後2年間で、4トラックMTRで色々試して、1983年には、Stefan Mohrと共に、Die Egozentrischen 2 (ディー・エゴツェントリッシェン・ツヴァイ)と言うバンドを始めている早熟な音楽少年でした。そんな天才少年を、Zick ZackのオーナーでオーガナイザーでもあるAlfred Hilsbergが見逃す訳もなく、Kubinを色んなライブイベントに招聘したりして、更に、彼のカセット作品と若干の新録も加えて、アルバム”The Tetchy Teenage Tapes of Felix Kubin 1981–1985" (この作品も素晴らしい!)をリリースします。そうして、1990年代になると、Kubinは、Klangkriekと言った自分のバンドで、ノイズを使った実験音楽を始めます。1992-1994年には、ダダ共産主義者グループLiedertafel Margot Honeckerのメンバーになり、1988年には、自身のレーベルGagarin Recordsを始めて、再びアヴァン・ポップ路線に回帰、その翌年には、パフォーマンスや新たなラジオ番組の形態及び室内楽と電子音楽の為の作曲を通して、自身の音楽の方向性を広めていきます。加えて、独や海外での多くの出版物やワークショップ及びレクチャーを行い、更に映像や演劇の為の音楽も作っています。Kubinは、Sónar, Wien Modern, Présences électronique, Ars Electronica等のフェスで100回以上のライブを行っており、更には、MoMA PS1, New Museum of Contemporary Art, Galerie nationale du Jeu de Paume等の美術館でもパフォーマンスをやっています。それで、2005年以降は、彼は現代実験音楽と関わる機会が多くなり、特に現代音楽のアンサンブルやコンサートホールでの演奏用音楽の作曲に招聘されるようになります。2010年には、Ensemble Intégralesとのコラボで、”Echohaus"と言う6つの別々の部屋で行われたヘッドフォンで聴くライブコンサートを指揮し、この作品はBerlinのMaerzMusik Festivalで初演されています。2013年と2015年には、Chromdioxidgedächtnis"とNDR das neue werkと言うラジオ番組シリーズの"Takt der Arbeit" の2曲の作曲を依頼され、2016年にも、Internationales Musikfest Hamburgで、自身の作品”Falling Still”も初演されています。また同年には、20台のKorg MS-20シンセの為のオケの曲”A Choir Of Wires”も作曲し、GentのLUCA School of Artsの学生に演奏させています。2019年には、ポーランド系ドラマーHubert ZemlerとのデュオCELを結成、またHamburgのEnsemble Resonanzとのコラボで、2曲作曲しています。2019年には、仏人映画監督Marie Losier が、Felix Kubinの日常を撮った映画"Felix in Wonderland"で、Locarno Film Festivalにおいて受賞しています。 と言う風に、Felix Kubinは早熟にして多作、しかもポップミュージックと現代音楽との行き来して、八面六臂の活動をしてきた訳ですが、実は、1990年代に来日もしていて、素晴らしいソロ・パフォーマンスを披露してくれています。そんな天才Felix Kubinの10代でつくつた曲のセルフ・コンピ・アルバムが、この”Teenage Tapes”で、Korg MS-20シンセを駆使した曲が選ばれており、12曲中6曲が未発表曲と言うレア・アイテムになっております。それでは、各曲を紹介していきましょう。 ★A1 “Japan Japan” (2:10)は、強烈なマシンビートにシンセと変調Voで応酬する曲で、シーケンスも複雑で、彼の代表曲にして良曲です。 ★A2 “Agitabo“ (2:50)は、マシンリズムと気が狂ったようなシーケンスを組んでおり、手弾きも含めて、これが10代の作る曲とは思えませんね。因みにインスト曲。 ★A3 “The Germans” (3:32)は、ホワイトノイズとキックでの四つ打ちリズムに、重低音からのベースラインとおどけたようなシンセのメロディが不釣り合いながらもマッチしています。これもインスト曲。 ★A4 “Melancholia” (3:52)は、ストリングス・シンセによるリズムとシンセの物悲しいメロディから成るインスト曲ですが、途中の曲調の転換も含めて構成が秀逸! ★A5 “Krematorien” (3:18)も、ホワイトノイズを使ったリズムと複雑なリズムマシンのリズムに、若かりしKubinのVoが乗る曲で、やはり、曲構成やシンセのユーモラスな使い方が超人レベルです。 ★A6 “Sonntagsspaziergang” (2:41)は、戯けたようなシーケンスとシンセのメロディとリズムマシンで、展開が早いインスト曲ですが、曲構成は素晴らしいです。 ★B1 “Calling My Brain” (1:40)は、怪しげなシーケンスとVoから成る曲で、展開も絶妙で、とにかくシンセの使い方が素晴らしい! ★B2 “Sie Träumen Alle” (5:20)も、忙しないシーケンスとリズムマシンに、キッチュなシンセとVoが乗る曲で、途中のブレイク等、よくアレンジ出来るなぁと感心!また、ユーモアも忘れていません。 ★B3 “Gelegenheitsexperiment 1” (2:01)は、シンセ音による音とエレクトーンのリズムボックスみたいなリズムでスイングするようなインスト曲なんですが、ジャジーさは皆無です。 ★B4 “Hans, Der Ist Nicht Artig” (3:14)は、多分TR-606のリズムと性急なシーケンスに、ツボを押さえたシンセが絡むインスト曲。やはり天才か! ★B5 “Qualität Des Staates” (3:18)も、性急なマシンリズムとシーケンスとVoに、ユーモラスなシンセから成る曲ですが、完全にピコってて、しかも録音技術も卓越しています。 ★B6 “Kunststoff Version” (2:26)も、また忙し過ぎるマシンリズムに、SE的シンセ音やヴォイス等が乗っかるインスト曲で、細かい所まで凝っていますね。 10代の頃のFelix Kubinは、サヴァン症候群ではないかと思わせる程、曲作りや構成、シンセの音作りや録音技術が、多動の中で渦巻いており、そこから出来た音楽は、多分他のNDWバンドよりも数十倍凄い完成度です❗️シンセとリズムマシンがあれば出来ると言うレベルを遥かに超えています。正しく、エレクトロ・ポップ界の天才児であると確信しました。なので、エレ・ポップ好きなリスナーさんで、未聴の方は、是非とも一聴されることをお勧めします❗️ハマるかもよー。それから、個人的には、Felix Kubinと平沢進がコラボしたら面白いと妄想しましたね。 A6 “Sonntagsspaziergang” https://youtu.be/J5jg9wLKVfg?si=47zftl0M7IC7StyG [full album] https://youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_lwDMvjLYcRGnyGslNQliiyKzvO7Xs42_U&si=oZdn2huN9_gbDX7K #FelixKubin #TeenageTapes #MinimalWave #SynthPop #Experimental #Electro #Synthesizers #DrumMachine #Vocal #KorgMS-20 #Organ #SelfCompilationAlbum #PreviouslyUnreleasedTracks
Neue Deutsche Welle (German New Wave) / Synth Pop Minimal Wave 3800円Dr K2
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非常階段 “Viva Angel”
今回は、最凶/最強のノイズ・バンド非常階段のセカンド・アルバム”Viva Angel”を紹介します。このアルバムは1984年に、自身のレーベルAlchemy Recordsからリリースされていますが、この頃になると、ファースト・アルバムのような「キワモノ」扱いはすっかり下火になり、ノイズを単なる騒音パフォーマンスから音楽としてのノイズへとシフトしていってます。その為か、このセカンド・アルバムは余り評価されていないようにも思えます。実際、私もこのアルバムに関しては、リリース当時は某友人から聴かせてもらったけれども、最初は琴線に触れなかった位ですから。既にパフォーマンス組は離脱しており、音楽組だけが残り、非常階段を続けていたようです。この時のメンバーは、JOJO広重 (G), Junko N. (Vo), 林直人 (B), 横山Sakevi (Others), T.美川 (Electronics, Vo)の5人でした。また、このアルバムは、ライブ録音では無く、1984年9月にAlchemy Studioでのスタジオ録音であったことも大きいようです。 それでは、ピュアにノイズ・ミュージックをやり始めた非常階段のセカンド・アルバムを紹介していきましょう。先ず、ジャケのデザインはFaustの”So Far”のオマージュでかつアルバム・タイトルはLa Düsseldorfのアルバム”Viva”から来ているようです。そんなプログレ好きな非常階段のアイデアが詰まっています。内容もA面6曲/B面1曲と言うアシンメトリーな構成になっています。それでは、各曲を紹介していきます。 ★A1 “Seeds Rock 'N Roll”では、呪文のようなVoと電子音と単調なスネアの反復打撃音から成り、一応、リズムらしき構造は聴取出来ます。 ★A2 “Hellthy Girl”は、分厚い電子音とGノイズが暴れる上に、Junkoと思われるVoiceが聴こえる曲です。フィードバック音がノイズだなあと思わせます。 ★A3 “Secret Desire”は、浮遊する電子音とGらしきノイズ音から成る曲で、引いた感じがまた良い。スタジオ録音らしい出来映えで、新境地ですね。 ★A4 “Twilight Guitar”は、空間を切り裂くGノイズが前面に、そしてバックには電子音が聴取できる曲です。JOJOさんのG、凄いですね。 ★A5 “Viva Angel”は、ビートを叩き出すDrsとBの上に、Gノイズ(と電子音?)が乗ると言った元祖ノイズ・ロック的な曲で、Voiceすら聴くことが可能で、異色なチューンで、カッコ良いです! ★A6 “Broken Young Bud”は再び、電子音とGノイズのテンションの高い絡みから成る曲で、複数のVoiceと言うか咆哮から成る曲です。これらのバックに通奏低音のような持続電子音が流れています。 ★B “Bad Character, But Great Sounds”は、A面とは異なり、Gノイズと電子音とBらしき低音等がかなりの音圧で収められており、ここら辺から、ノイズ・バンドとして自覚的に曲を録音するようになったのではないかと思われます。A5と共に、B面一杯使ったこの曲も、本アルバムのハイライトでしょう。個人的には、この曲が一番のお気に入りです。それにしても、曲名の「性格悪いが、音凄い」とは誰のことでしょう? スタジオを使っての録音と言うこともあって、各音が比較的分離して良く聴こえます。それが良い悪いは別として、「音楽」としては聴き易くなっていますし、それでも、B面一杯を使っての曲などは、強靭な音(=ノイズ)を放射しており、その後の非常階段の音楽性を示唆する出来映えだと思います。また、A5のようなロック的アプローチも興味深いですが、確か、多重録音で録ったとか(間違っていたら、ごめんなさい!)で、当時はそんな音楽を欲していたので、良く覚えていましたね。きっとJOJOさんのロックへの偏愛なのでしょう! 非常階段がプログレから始まったのを確認出来る一枚となっています。なので、そのルーツとその後の発展性を知るには重要なアルバムだと思いますので、ノイズ偏愛者のリスナーさんはマストなアルバムですよ‼️ A1 “Seeds Rock 'N Roll” A2 “Hellthy Girl” A3 “Secret Desire” A4 “Twilight Guitar” A5 “Viva Angel” A6 “Broken Young Bud” B “Bad Character, But Great Sounds” https://youtu.be/bgi_TeuhGLc?si=wU5FD2XqR6Jd3Whj #Hijokaidan #非常階段 #VivaAngel #AlchemyRecords #Noise #NoiseMusic #StudioAlbum #SecondAlbum #JOJO広重 #JOJOHiroshige #JunkoN. #NaotoHayashi #林直人 #Sakevi #横山Sakevi #美川俊治 #T.Mikawa
Noise / Noise Rock Alchemy Records 不明Dr K2
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Hastings Of Malawi “Choreological Exchanges”
皆さんは、Hastings Of Malawi (以下HOMと表記)と聞いて、何を思い浮かべますか? その中で、Nurse With Wound (以下NWWと表記)を思い浮かべた方は、相当なマニアですねー。HOMのメンバーは、Heman Pathak, John Grieve, Dave Hodesの3人なのですが、その内、Heman Pathakは、Steven Stapleton, John Forthergillと共にNWWがトリオだった時のメンバーで、シンセのプログラミングと作曲を担当していました。ただ、NWWが有名になり過ぎて、大会場でのライブをやるようになって、彼はNWWを脱退し、ジャズとワールド・ミュージックに傾倒していくようになり、バンドBig Daddy El Diabloのメンバーにもなります。一方、John Grieveは、ソロ活動もしており、主にサックスなどをループにした音響作品を発表しています。それで、HOMは、1981年にはファースト・アルバムをリリースしており、グループとしては古株なのですが、2018年まで何もリリースしていない時期もありました。その後は寡作ながらも、コンスタントにリリースしています。また、HOMは、元々、英国ダダイスト音楽グループとして認知されていたようです。もう少しまともなバイオグラフィーを書こうと思ったのですが、何如せん情報がありませんでしたので、ここで一旦止めておきます。 それで、内容ですが、A面B面共に1曲ずつで、A面には”Foxtrot”、B面には”Rhumba”と表記されています。一言で言ってしまえば、両面とも、NWW直系のミュージック・コンクレートなのですが、様々な非楽器音(時には、楽器の音も)を、そのまま使ったり、変調したり、テープスクラッチしたり、逆回転にしたり、エフェクト掛けたりして、緻密にそれらの音素材を繋ぎ合わせ、架空の「音」による物語を作っているかのようです。また、古いレコード(SP盤?)の挿入もあり、雰囲気も抜群です。特に、B面ではどこで入手したのか、日本の古い長唄らしきレコードの断片も使われています。どうも、コロナ禍の為、リモートで録音作業が強いられた為、リモート・コミュケーションをテーマにして作製されており、その為、電話がデジタル化される前の電話交換機の音や、それに関わるエンジニアのやり取り、更には電話の話し声を多用しているのが特徴ですね。本家のNWWと同様に、正しく「怪奇骨董音楽箱」と言っても良いような出来栄えですね。因みにバンド側は「ダンス・ミュージック」と言っているようです。なので、NWWが好きなリスナーさんはマストですよ‼️ そうじゃない初心者の方も興味があれば、是非とも聴いてみて下さい。この手のノイズ・ミュージックは良いステレオ・システムで聴きたいものです❗️ A面 “Choreological Exchanges (Pt.1): Foxtrot” https://youtu.be/kqQoVpGFSsM B面 “Choreological Exchanges (Pt.2): Rhumba” https://youtu.be/4PYwr_5gQlM #HastingsOfMalawi #ChoreologicalExchanges #SubRosa #Experimental #Abstract #Noise #MusiqueConcrete #Collage #NurseWithWound #HemanPathak #JohnGrieve #DaveHodes #電話 #Telephone #DanceMusic
Experimental / Abstract Sub Rosa 3100円Dr K2
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Ruins “New Record”
今回、ご紹介するのはRuinsです。でも、あの超絶ドラマー吉田達也氏の方ではなくて、伊の2人組の方です。このバンドは、 1978年9月にAlessandro Pizzin (Kbd)によって結成されたバンドです。その時のメンバーは、Alessandro Pizzin (Kbd)に加え、Franco Moruzzi (Drs)とGirogio Salvedego (B)及びAlex Masi (G)でしたが、その編成に、時々、マルチ奏者Alessandro Montiが加わっていました。バンドは直ぐに伊地下音楽界に参入していきます。1979年春に、Masiが脱退し、1980年初頭に、Piergiuseppe Cirannaが新たに加入します。この頃、CirannaとPizzenの中心に、実験的電子音楽バンドRuinsが活動し始めます。彼等は、Gianni VolpatoとAlessandro Rigatoによる写真やファインアートからの着想で、電子楽器とメディアミックスに焦点を当てて、オリジナルな非ダンスミュージックやダークなポスト・プログレと言ったポップソング傾倒していきます。1981年5月に、Ruinsは”Elegant Shout”や”Short Wave”と言った新曲を録音しますが、これらが彼等の丁度分岐点になります。同年6月初旬に、Ruinsは、”Restless House”と言う短編映画の劇中歌や”Short Wave”と言うビデオ作品や16mmフィルムに集中しますが、結局、これらの映像作品はうやむやになってしまいます。1980年9月4日にArt Retro Ideasが、伊のコンピ・アルバムに彼等の曲を加えたり、同年11月21日には、Ruinsのファースト・シングル”Short Wave” c/w “You’re Like A Cigarette”をリリース、共に良い評価を得ます。それで、1981年に、彼等は新曲の為にオーディションを行い、1982年初頭には、CirannaとPizzinに、Franco Moruzzi (Drs), Massimo Bertatto (B), Moreno Barbazza (Perc, Back-Vo)を加えた新ラインナップで活動します。1983年にはバンドはメジャーレーベルと契約し、シングル”Fit of Nerves” c/w “Stoll of Girls”をの同年1月に録音、リリースしています。一方、PizzinとCirannaはサイドプロジェクトを始動し、伊のプログレバンドLe Ormeのアルバム”Ad Gloriam”のカバーをやっています。しかしながら、5人体制だったバンドは突如解散してしまい、CirannaとPizzinのデュオになります。1983年に、Fricchetti Productionは、限定版のテープとブックレット作品”Side Raids”をリリースしますが、これには彼等の実験的な面とよりポップな面/未発表ソロなどの面が含まれています。その後、バンドは、2つのプロジェクトを開始します。一つはDevoやThe Residentsに影響を受けたもの、もう一つはラテン・アメリカン・ソングを電子楽器で演奏するものです。Ruinsの方はPippo Monaro (B)がヘルプで加入しますが、あくまでもデュオの形は崩しません。その後、Ruinsはドラムマシンとシーケンサーを導入し、ヘビーなKorg MS20 シンセのベースラインがリズムセクションを担当します。バンドは、independent management company (BSR)とコンタクトを取って、Ruinsをプッシュしてもらい、彼等のフィースト12㌅EPをリリースします。そんな中、ヴェネチアの画家Luigi Violaの作品とのタイアップなリリースの機会を得、アルバム”Merea / Tide”を1984年11月にリリース、BSRはこの中の”Fire!”と言う曲を米国ビデオ会社にプッシュし、ビデオが製作されます。1985年9月に全国O.I.L.協会の25周年祭の際、最早、デュオとしては演れなくなり、Ruinsは同年10月1日に解散しています。Alessandro Pizzinはその後、プロの音楽家としてHakkah and Hexのようなバンドもやりつつ、1980年代後半に新しいRuinsをも立ち上げています。Piergiuseppe Cirannaもまた違った方向性でプロとして活動してしています。 ちょっと長くなりましたが、これが伊のRuinsの略歴です。今回、ご紹介するのは、Ruinsとしては、カセットアルバムを含めると、5枚目にして最後のアルバム”New Record”です。ここでは、先述のように基本的には、CirannaとPizzinのデュオの形態を取っています。Piergiuseppe Ciranna (G, ARP Synth, B, Casiotone, Vo, Tapes, Drum Machine)とAlessandro Pizzin (Kbd, Fender Rhodes 88 e-Piano, Korg MS-20, Pizzynth, Tapes, Drum Machine)が参加しており、B5ではFranco Moruzzi (Drs)、A4ではClaudio Cerroni (Vo), B2では、Francisco Calabro (B)が客演しています。ここに収録された曲は1981年初頭〜1983年初頭に録音されたもので、その一部はかつて”Side Road”と言う限定版でもリリースされています。なお、B2 “The Try”は1981年1月のライブ音源です。全体の印象は、所謂、1980年代の欧州で見られたシンセ・ウェーブなんですが、何ともチープなところに味がありますね。ドラムマシンって言っていますが、これは一番安いDR-55でしょ(私もずっと愛用してました)? Voパートはあるものの、どちらかと言うとインスト曲が中心なのかな? それとあんまり音を重ねていないようで、スカスカなシンセウェーブですね。まあ、録音が初期のものだからと想像します。それと基本的にミニマルですが、シンセ音だけでなく、ギターやベースなんかの音も効果的に使っています。また、インスト曲が多いこともあって、シンセによるSE的な曲や、B2 “The Try”などの即興演奏的な曲(特に冒頭のピアノなど)も含まれており、全体的に短い曲が多くても、飽きさせません。どちらかと言うとA面は習作的で、B面は実験的な印象も持ちますが、世界中に溢れていたシンセ・ウェーブの一端を担っていたRuinsも聴いてみませんか❗️ A7 “I Love You” https://youtu.be/c2fHFG__T4U A5 “New Record” https://youtu.be/3i9YvMGqBq0 B5 “Freak Song” https://youtu.be/p28FpLZyWl0 #Ruins #NewRecords #MothballRecords #Italian #Duo #SynthWave #DR-55 #MinimalWave #Experimental #PiergiuseppeCiranna #AlessandroPizzin
New Wave Mothball Record 不明Dr K2
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Étant Donnés “Le Sens Positif”
ド迫力のジャケで登場したのは、久しぶりの仏の兄弟ノイズユニットÉtant Donnésです。彼等はMarc HurtadoとEric Hurtadoからなりますが、彼等のバイオグラフィーは既に書きましたので、以前のものを参照してください。因みに、最近では兄のMarcは、Lydia Lunchと共にSuicide/Alan Vegaのカバーをライブでやってますね。それで、今回、ご紹介するのは彼等の8作目のアルバム “Le Sens Positif“で、A面3曲、B面3曲入りの作品です。察しの通り、ノイズ・ミュージックなんですが、とにかく、各曲のテンションがバカ高いです。勿論、緩急は付けてありますが、2人の怒号と言うか絞り出す声と言うかと息を吐き出す喉の音や囁き声が複雑に絡み合い、更にそのバックには磁気テープ操作で形成された得体の知れないノイズや環境音が流れて、全体としてトルネードのようにグチャグチャになって、リスナーの耳を襲ってきます。しかも、シアトリカルな演出もあるようです。思うに、かなり「生理的」に直撃する音楽なので、好き嫌いが分かれると思います。そして、彼等の音楽(=ノイズ・ミュージック?)は、他のどのノイズ・ミュージシャンの音にも似ていないことも、一つの特徴でしょう。完全なる孤高で独自のノイズ・ミュージック、と言うか「表現形態」と言ったものに達していると考えます。少なくともこう言った音楽は他には私は知らないです(私が知らないだけかもしれませんが)。あと、仏と言うお国柄や兄弟であることも、その独自性に関係しているのかも知れませんね。なので、聴く際には、充分注意して聴いて下さい❗️なお、どの曲も捨て曲無しですので、傑作です‼️ B1 “Mon Cœur 2 Âmes” https://youtu.be/o9piRlXA15k [full album] https://youtube.com/playlist?list=PLxWgIPiVobojCc7-CtP5klxpORG3omt9j #ÉtantDonnés #LeSensPositif #DMA2 #Experimental #Noise #Theatrical #MarcHurtado #EricHurtado #Voice #MusiqueConcrete #TapeManipulation #FrenchNoise #Brotherhood
Noise / Experimental DMA2 不明Dr K2
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19 “Juke”
いやー、やっとですか❗️ヴァイナルでの19の再発は!当時、噂は聞いていて、その時にセカンド・アルバムとシングルは買ったのですが、ファースト・アルバム”Juke”はその後、見かけなくなり、ヤフオクとかでも中々高価で手が出ませんでした。まあ皆さんもご存知のように、19とは、芸術家の大竹伸朗氏が1978年に野本卓司と結成したバンドで、その後、1980年に遠山俊明と太田陽子が加入し、その年の12月にファースト・アルバム”Juke”を自主制作でリリース。45曲をぶち込んだアルバムで、実験的と言うかローファイなノイズ・ロックの残骸が散らばっています。多分、ノイズ・ミュージックを意識してやろうとしていた訳ではなく、取材用テープレコーダーによる録音の為、このように歪んでしまったり、歪になった結果が、このような音楽となったのであろうことはライナーノーツを読まずとも、推測できます。特に、セカンドでは8チャンネル・ミキサーを購入したことで、音の分離は良くなってますが、このファーストではミキサーも無く、部室のスタジオでテープレコーダーによって、兎に角、全部録音はしていたみたいです。そんな中で、”No New York”が1978年にリリースされ、日本にも噂と現物が店頭に並び始めたことで、自分達のやっていることはノイズでも現代音楽でも即興音楽でもなく、この音だ!と大竹氏は直感し、ロンドンから帰国後、今まで録り溜めたテープを選別し、その中から使える部分を取り出して、本作品を作り、4人でお金を出し合ってリリースしたとのこと。そして、彼等の演奏は全くのアドリブで、その場の雰囲気とかで録り方も演奏も変わってしまう。それを録音し続けた訳です。これは大竹氏のあのスクラップブックにも通じるのではないか?そう思ってしまったのです。それにしても兎に角、凄い。細切れの音?音楽?が次々に現れる、圧倒的物量で! なので、今、「大竹伸朗展」が開かれてますが、それに通じる「溢れかえる情報量」、それが、私の心を揺さぶるのです。当時は、発想の転換とも思ってましたが、ライナーを読んで認識を改めました。そんな音楽?に是非とも触れて欲しいです。あっとそれから、19のメンバーをもう一度紹介しておきます。Shinro Ohtake (B, Synth), Takuji Nomoto (G, B, Drs, Vo), Toshiaki Tohyama (G, B, Synth, Organ, Vo), Yoko Ohta (Vo)。因みに、再発盤のデザインはオリジナルと同じですが、色は「青」「黄」「赤」と3種類があるようです。またちょっと装丁にも凝っていますので、是非、皆さん、マストですよ❗️ https://youtu.be/lRdrXKE5svc #19 #Juke #Enban #Reissue #ShinroOhtake #TakujiNomoto #ToshiakiTohyama #YokoOhta #TapeRecorder #Lo-Fi #NoiseRock #AdLib #Experimental #NoWave #FirstAlbum #ScrapBook
Noise Rock Enban (self release) 4200円Dr K2
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Der Dritte Schritt / Der Pilz “s/t”
1980年前後、独逸でも零細DIYバンドや宅録者が雨後の筍みたいに、様々なバンドやソロユニットなどが出てきて、Neue Deutsche Welle (NDW: German New Wave)の呼ばれる時期が到来します。その中でも、独逸特異的なカセット・カルチャーが、雨後の筍の如く現れた玉石混合のバンドやソロユニットによって、形成されています。その時に有名だったレーベルが、Tapes Klar !とDas Cassetten Combinatです(因みに前者は元々店舗でした)。そして、その後、この独逸の地下カセット・カルチャーの再評価が行われて、その一部はvinylとして再発されています。その一翼を担ったのが、再発専門レーベルWas Soll Das? Schallplatten (「ヴァス・ゾル・ダス?シャールプラッテン」と発音)です。今回はその中の一つ、Der Dritte Schritt(デァ・ドリッテ・シュリッテ)とDer Pilz(デァ・ピルツ)のスプリット再発盤を紹介したいと思います。Der Dritte Schrittに関しては、全く情報がありめせん。一方、Der Pilzも良くは分からないのですが、Lutz Pruditschなる人物のソロユニットのようで、彼は、自分自身のレーベルTrümmer Kassettenを運営しており、1982年〜1999年の期間にリリースを確認できます。両者とも宅録だと思うのですが、Der Dritte Schrittはどちらと言うとリズムボックスとシンセ、時にギターも加えた楽曲っぽい曲を演っている作風です。一方、Der Pilzは、適当なものを叩いたり、テープ音やヴォイス、過剰エフェクトなどを中心にショートカットな曲を即物的に配置したており、より実験色が濃ゆいです。当時の独逸カセット・カルチャーを知る上で、チープですが、自由な発想で録音出来た作品を掘っていると感じます。もし、この時期の匿名的実験的独逸地下音楽を興味があれば、是非とも聴いて欲しい一枚です❗️ここら辺の音楽は日本ではDD.Recordsや第五列辺りに相当するとは思います。 Der Dritte Schritte “Untitled 2” https://youtu.be/lLdZDFRZlo8 Der Pilz “Alma” https://youtu.be/BipBkbWUS0Y #DerDritteSchritt #DerPilz #WasSollDas? #NeueDeutscheWelle #GermanNewWave #Underground #CassetteCulture #Experimental #宅録 # CheapInstruments
Neue Deutsche Welle (German New Wave) Was Soll Das? Schallplatten 不明Dr K2
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Nurse With Wound “The Sisters Of Pataphysics”
Nurse With Wound (NWWと記す。「ナース・ウイズ・ウウンド」と発音)の初期の3枚のアルバムからの曲をミックスし直した?或いはセルフ・カバーした?ものをコンパイルしたアルバムで、一応、オフィシャルなリリースです。NWWのバイオグラフィーは前回書いたと思いますので、ここでは省略します。この時のメンツはSteven Stapleton, John Fothergill, Heman Pathak の3人です。それで内容なんですが、A1とB1がファースト”Chance Meeting On A Dissecting Table Of A Sewing Machine And An Umbrella”から、A1とB2がセカンド”To The Quiet Men From A Tiny Girl”から、A3とB3がサード”Merzbild Schwet”からとなっており、A1”Blank Capsules Of Embroidered Cellophane”では、Steven Stapletonと共にミックスをやっているNicky Rogersがギターソロで参加、またA2“Ostranenie”ではJac Berrocalがtrumpetで参加しています。とまあ、一筋縄ではいかない内容になっております、はい。これはGvn’t Alphaの吉田くんが言っていた言葉ですが、「NWWは目で聴き、耳で見る音楽です」と。正しくその通りだと思います。基本的には、音はコラージュなんですが、その偏執振りが尋常ではないです。正確に元音と比べてはいませんが、細部まで拘っているようです。NWWの音を聴いていると、目の前に色んな情景が垣間見られると思う程、視覚野を刺激する音の組み合わせなのだなぁと思いますねぇ。どうです?皆さん。興味、涌くでしょ! このアルバムのヴァージョンはなかったので、元曲を。 https://youtu.be/WVi30nC30xE #NurseWithWound #TheSistersOfPataphysics #IdleHoleRecords #SelfCompiled #Collage #Experimental #Remix #Rework #ChanceMeetingOnADissectingTableOfASewingMachineAndAnUmbrella #ToTheQuietMenFromATinyGirl #MerzbildSchwet #StevenStapleton #JohnFothergill #HemanPathak
Noise Experimental Idle Hole Records 不明Dr K2
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TNB(The New Blockaders)+K2 “虚無の音”
時々、自分関連のも載せますよ〜!と言う訳で、今回は、The New BlockadersことTNBとわたくしのソロK2のコラボ作”虚無の音(Kyomu-No-Ne)” です。これは時間がかかった、いや、かかり過ぎた。相互のコラボなので,お互いが音素材を交換して、それを変調・加工し、また、自分の音を加えたりしながら、曲をそれぞれが仕上げていくと言う方法をとりました。音素材を交換したのは2001年頃だったと記憶していますが、その後、音沙汰無いなぁと思っていたら、勝手に、アメリカのBanned Productionsからコラボ曲がカセット作品”Oozing Ruin”として2002年に出されちゃうし、、、まあ,良いんですけどね。兎に角、Richard Rupenusのリアクションが遅い!忙しいみたいなことはメールしてくるんですが、それで前述のカセットが出てから8年経って,漸くTNB側のミックスが終了しました。長かったなぁ。まあ、Richardのレスが遅いとは聞いてましたが、ほんとッ、参りました。因みにTNB側のメンバーはRichard & Philip Rupenus兄弟とMichael Gillhamの3人のようです。”Oozing Ruin”の時は私のミックスに何らかの加工をしたみたいですが、今回もTNB側は割とストレートなミックスで仕上げていますね。それに対して、私の方はまだjunk electronicsと言うミキサーのフィードバック・システムを用いており、かつミックスダウンも人力カットアップで行なっていましたので、モデュラーを使っている今のK2の音とはかなりの落差がありますね。それで、TNB側が送ってきた音素材は彼等のシンボルでもある金属摩擦音であったと思います。一方,私の方は,先程書いた通りミキサーのフィードバック音だったと思います。それで、リリースレーベルも決まって、ジャケはどうしようか?との話しになって,そうだ! G.X.(Jupiter-Larsen)に頼もうとなり、すぐさま連絡したら、OKで、作ってくれました。しかし日本語のフォントがダサいので、何とか作り直そうとしたのですが、G.X.に押し切られてしまいました。まあ,そう言うことも含めて、無事、LPがリリースできて,良かったなあと感慨深いです。それで、今回、聴き直して気づいたのですが、A-1とA-2は明らかな切れ目ななく、繋げられています❗️また、違う形でコラボしたいなとは思います。もし、下記のトライラーをみて、興味がある方は、是非ともLPをご購入ください。 https://youtu.be/piQ2C5tkhcE [“Oozing Ruin” full album] https://youtu.be/AkSgV8XDtdQ #TheNewBkockaders #TNB #K2 #Kyomu-No-Ne #Collaboration #4iBRecords #G.X.Jupiter-Larsen
Noise 4iB Records 無しDr K2