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Bladder Flask ”One Day I Was So Sad That The Corners Of My Mouth Met & Everybody Thought I Was Whistling”
Bladder Flask、この名前を聞いて知らないのは、ノイズ・ミュージック・ファンとしてはもぐりだな(と言うのは言い過ぎか?)。そうです、あの英国が産んだニヒリスト・ノイズの王者TNBことThe New Blockadersの前身バンドなんです。この時のメンバーはTNBのメンバーであるRichard & Philip Rupenus兄弟で、このアルバムではMetgumbnerboneのJohn Mylotte, Nigel Jacklin, Sean Breadinらが参加しています。Bladder Flaskの結成や成り立ちについて調べたのですが、詳細な情報はありませんでした。ただ、あの頑固な偏屈者であるNurse With Wound(以下NWWと表記)のSteven Stapletonが大ファンであったと言う事実で、その立ち位置が想像できますね。このアルバムが唯一の単独アルバムなのですが、2019年頃に4枚程コラボ・アルバムをリリースしています(勿論、NWWとのコラボもありです)。本アルバム(タイトルからしてやり過ぎ感あり)は1980-1981年にWrongrong StudioとSpectro Arts Workshopで録音されたものであり、今回の再発に当たっては、英国きっての敏腕エンジニアであるColin Potterがマスタリングを施しており、またジャケ写も差し替えられています。そしてその内容なのですが、A面B面1曲ずつと長尺の曲から成り、NWWの”Merzbild Schwet”に匹敵するミュージック・コンクレートとダダイスティックな楽器演奏の混合物で、カットアップなミックスから強靭なインパクトを持ち得た大傑作とも評されています。そうですねー、全く弾けてないようなギターやチェロやピアノと言った既存の楽器音の断片をそのまま或いはディレイを掛けたり、回転数変えたり、ループにしたりして、ランダムに配置。そこにテープ音やナレーション或いは具体音などを絡めて直列或いは並列にミックスしたりとやりたい放題ですね。確かにNWWのStepltonが大ファンなのは分かりますよ。全ての音と言うものを並列に並べて、それを好きなように配置していくと言う意味で、「即物的音楽」と言えるでしょう。もし、NWWファンの方であれば、このアルバムは聴かなきゃならんでしょう❗️そうでなくても、必聴アイテムですね。 https://youtu.be/Zj1TAzVyuQM #BladderFlask #OneDayIWasSoSadThatTheCornersOfMyMouthMet&EverybodyThoughtIWasWhistling #Sonoris #OrgelFesperMusic #Reissue #Remastering #Dadaistic #MusiqueConcrete #CutUpMix #Electro-AcousticNoise #RichardRupenus #PhilipRupenus #TheNewBlockaders #ColinPotter #StevenStepleton
Experimental Music Sonoris (Orgel Fesper Music) 3377円Dr K2
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Christoph Heemann “Magnetic Tape Splicing”
皆さ〜〜ん、覚えていますか?独逸のNurse With WoundことH.A.N.S. (Hirsche Nicht Aufs Sofaの略語)の中心的存在であったChristoph Hermann先生のことを❗️H.N.A.S.が1993年に解散した後、彼は、英国のThe Legendary Pink DotsのEdward Ka-Spelとコラボをやっており、やがて、このコラボはMimirと言うユニットになります。更にHermannは独逸人ミュージシャン/パーフォーマーのLimpe Fuchsや当時米国に住んでいたJim O’Rourkeともコラボを開始しています。それとは別に、Hermannは英国のドローン作家Andrew ChalkとデュオMirrorを結成して、多くのリリースを、ハンドメイド包装で活動していましたが、2005年に活動停止しています。また、Current 93のDavid Tibetのとも交流もあった為、Current 93に参加して、やがてメンバー扱いになっています。それが1990年代という訳です。また、彼は、Af UrsinのVan Luyckとも2004年にコラボユニットIn Camera を開始しており、4枚の作品をリリースしており、これらの作品は、即興性の観点から見て、本来の「電子音響音楽」1であるだということみたいです(私は未聴)。それで、ソロとしての活動ですが、H.N.A.S.解散後、活発になり、数多くのTV出演以外にも、Texas, Chicago, TorontoやTokyoで頻繁にライブ・パフォーマンスを行なっています。ソロ作品には、”Invisible Barrier “(1992), “Aftersolstice” (1994), “Days of the Eclipse” (1996), “Magnetic Tape Splicing” (1997), "The Rings of Saturn"(2010)と名付けられ、本作品もこれらに含まれています。最後の作品は、Heemannが好きだった独逸人著者のW. G. Sebaldの小説のタイトルの隠喩だそうです。それで、本作品ですが、ソロ名義になっており、両面とも、ランダムに針飛びさせたレコードの具体音のテープを、更にランダムに切ってコラージュしたかのようなミュージック・コンクレート作品となっております。Nurse With Wound的ではありますが、こちらの方が即物的な出来になっています。ネタバレすると両面に1曲づつ収録されているのですが、共に5分もなく、なんで12インチしたんや?と疑問が湧きます。確かに内容は高水準なのは分かるんですが。この頃の音響系アーティストはどうもこう言う一種の「ぼったくり」みたいな作品が多かったですね。それも限定にして、それなりの高い値段で売ると言う、、、まあ、それでも宜しければ、聴いてみても良いかも? https://youtu.be/7tf13I7uqYU #ChristophHeemann #MagneticTapeSplicing #RobotRecords #MusiqueConcrète #45RPM #H.N.A.S. #SoloWork
Experimental music Robot Records 不明Dr K2
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Dome “Dome 1”
やっと見つけました。WireのBruce C. GilbertとGraham Lewisが1980年に作った実験的ユニットDomeとしての最初のアルバム”Dome 1”です。WireやDomeについては既に紹介していますので、そちらを参考にして下さい。Domeについては、少し補足をしていきます。Wireが分裂した後、1980年にB.C. Gilbert and G. Lewis名義で、アルバム”3R4”をリリース、更には翌年に、Cupol名義で、EP”Like This for Ages”を4ADからリリースしたことが、Domeの結成や活動のキッカケになっているようです。また、美術家Russel Millsとのトリオで、アルバム”MZUI”を1982年にもリリースしており、ますますDomeとしての活動のモチベーションが上がっていったようです。1983年には、Duet Emmo (“Dome”と”Mute”のアナグラム)名義で、Mute RecordsのDaniel Millerとの共作アルバム”Will You Speak This Word”を”Dome 4”扱いでリリースしています。そして、1984年にWireが再始動した後も、Domeとしては解散はせず、1988年には後期過去作品を集めたアルバム”Yclept”もWMOからリリースしています。 それで、本作品”Dome 1”の内容ですが、その後”Dome 3”で最高傑作となる彼等の音楽の「核」となる部分を感じさせられます。Bruce C. GilbertとGraham Lewisは共にVoice, G, B, Perc, Tapesを担当し、更にGilbertはDrs、LewisはSynthも担当しています。また一曲、ゲストにA.C.M.ことAngela Conwayも参加しています。ここでは、2人は、”Dome 3”で開花する抽象的な音楽には到達はしていないものの、所々にその萌芽を認めるところがあります。独特のエフェクトを掛けたギターやベースの音を「単なる音」として無慈悲に使う様は既にインダストリアルな響きを持っています。そんな中で、A2 “Cruel When Complete”でのA.C.M.の女性Voは、返って天使の歌のように聞こえます。まだ歌詞があり、ヴォーカルもある曲が多いので、それ程の抽象性はありませんが、それでも、楽器音に対する冷徹な使用方法は充分に感じられます。そんな萌芽的作品ですが、ここから、Domeの真髄を読み解いていくと面白いかもしれませんね。もし、聴く機会があれば、ぜひともここから聴いて、”Dome 2”, “Dome 3”と聴き比べてはどうでしょうか? A1 “Cancel Your Order” (2:12) A2 “Cruel When Complete” (3:15) A3 “And Then...” (4:15) A4 “Here We Go” (3:04) A5 “Rolling Upon My Day” (3:40) B1 “Say Again” (3:30) B2 “Linasixup” (3:10) B3 “Airmail” (3:22) B4 “Ampnoise” (4:17) B5 “Madmen” (3:29) A5 “Rolling Upon My Day” https://youtu.be/4U_EZpWJ9Js?si=GIrfUmSyybc__ajM [full album] https://youtube.com/playlist?list=PLprjTk8nvd1aBMlW-fWa25wh9RtQtoBCf #Dome #Dome1 #DomeRecords #Wire #BruceC.Gilbert #GrahamLewis #A.C.M. #Industrial #Experimental #AbstractMusic #Voice #Guitar #Bass #Percussions #Tapes #Drums #Synthesizers
Experimental music Dome Records 5000円Dr K2
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Emptyset “Medium”
これも、忘れかけてたブツです。Emptysetです。Emptyset(本当は全部小文字でemptysetらしいです)は、James GinzburgとPaul Purgasによって2006年に英国Bristolで結成されたデュオです。この2人は電子音楽の最前線を更に深化・進化していく革新者です。ここ数十年では、2人は、斬新で痛烈なアート作品を作り出す為に、思いも寄らなち独創的な作曲ツールをいつも使っています。また、彼等は、ゴシック・リバイバルの残った部分から、莫大なコンテンツを探求してきており、その前提として、彼等は、ゴシック・リバイバルとは、音響的にも見た目でも、完成までの過程を通して作り上げられたものと言うことです。中々、コンセプチュアルなデュオですが、今回の作品にもコンセプトがあるようです。この「培地」と名付けられたアルバムは、ユニークな空間的・言語的歴史に取り組む為に、極端な周波数な音源を作って、作品化したとのこと。それで、彼等はまず、構築と不完全性の中心になるテーマを探りだします。まるで、大邸宅が凍っていく過程を見ているように。この過程の「場」と言うものの本質は、音を通して脱コード化したり、翻訳されたりし得るものです。こんなコンセプトがあるとは知らずに聴いても、興味深い音楽だと思いますよ。音楽としての内容は、比較的低音、それも分厚い低音に軸を置いたダウンテンポはリズム或いはパルス音が主軸を成しています。そしてそこから派生していく細かいノイズの粒子が特徴的です。なので、ドローンでもないですね。一応、リズムらしき音はあるのですが、鉛のようにずーっんと重いです。こんなにストイックで強靭な音楽はそうそう出会うことはないので、中々聴き応えがあります。そうですねぇー、マリアナ海溝に降りていく特殊潜水艦の外の景色のような感覚に陥ります。それにしても厳選された音が色々なパターンで出てくるのであっという間に終わってしまいます。だから、また聴いてしまいますね。コンセプトを解明するも良し、音楽として純粋に聴くのも良し、です。かく言う私は、彼等の他の作品も聴いてみたいと思いました。さぁ、みんなで楽しみましやう! “Medium” https://youtu.be/G8LKgDNkK7o #Emptyset #Medium #Sutext #ElectronicMusic #LowFrequency #JamesGinzburg #PaulPurgas #重低音 #Conceptual #DeepSound
Experimental music Subtext 不明Dr K2
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Two Daughters “Recordings 1979-1981”
これまた、謎なバンドと言うか、デュオのセルフ・コンピです。私はこのTwo Daghtersが何者かも知らずに視聴して購入したのだと思います。Two Daughters、それはAnthony BurkeとPaulのデュオのことで、オフィシャルにはSteven StapletonのレーベルUnited Diariesが親レーベルになって、Anthony & Paulなるレーベル(ややこしい)からLPを1枚、その前に他のレーベル(多分、自分達のレーベルで、それしか出していない)からカセット作品を1本リリースしています。1980-1982年にBrixtonで宅録してたようです。如何せん情報も作品もこれだけなので、全然わかりません、知ってる人がいたら、教えて下さい!あと、Cherry Red Recordsのコンピ”Perspectives and Distortion"に”Return Call - We Are”と言う曲が収められているのですが、それにはJon Moreがclarinetで客演しています。そして、2004年にAnthonyは亡くなっています。 本作品は1本のカセットと1枚のアルバムから寄せ集めたセルフ・コンピで、1枚目がファースト・カセットを、2枚目がファースト&ラストLP”Kiss The Cloth / Gloria”を丸々入れて、ダブルLPにしています。それでマスタリングはJos Smoldersが手掛けています。まずはこの1枚目A面から。静謐な音響作品で、A-2に先述の曲”Return Call - We Are”が収められています。敢えてて一言で言うならば、アコースティック・アンビエントですね。B-1”Return Call”はA-2に対するアンサーソングかな?単調なクラリネットのフレーズが繰り返され、ズレていくので、何とも複合的なテクスチャーになつています。その後も、不思議/正体不明のアコースティックな感触の音が垂れ流されるかのように続いていきます。音は押しよりも引きの方に魅力を感じますね。2枚目のA面はLPのA面で、大きく”Kiss The Cloth”と題されていますが、歌物❗️に挑戦しているかのようなトラックから始まり、何処かに反復する音(ループ音)が隠されてます。A-3では反復するコーラスにロー・タムの連打と言う簡素ですが、コーラスが段々と変化(?崩れて)していきます。2枚目のB面はLPのB面で”Gloria”と題されており、いきなりAMKを思わせるアナログ・モンタージュ的なレコードの反復から始まり、そこにコーラスや弦楽の音が絡みつくと言う曲で、聴きていると、なんかLSDで幻覚見てるようです。他にも、シンバルやギター或いはガムランの反復音を使った、落ち着いた曲からなります。疲れている時に聴くとぐっすり眠れますね(苦笑)。そんな優しさに満ちたアルバムですが、偶にはこう言うのも聴いてみたくなりますね。 “Two Daughters” https://youtu.be/yr1gdEjuXEA “Kiss The Cloth” https://youtu.be/9cHl_ZiYEvQ #TwoDaughters #Recording1979-1981” “VinylOnDemand #SelfCompilation #ReturmCall-WeAre #AcousticAmbient #Loop #Anthony&Psul #KissTheCloth/Gloria
Experimental music Vinyl on Demand 不明Dr K2
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Doo-Dooettes “Look To This”
はたまた、ややこしいバンドをチョイスしました。米国LAFMSのDoo-Dooettes(ドゥー・ドゥエッツ)です。元々は、1975年にHarold SchroederとTom Recchionに結成したThe Two Who Do Duetsと言うバンドから後にDoo-Dooettesと改名したバンドです。本作品は、Doo-Doorttes単独としては唯一のLP作品となります。もうここら辺は坂口卓也さんに解説してもらった方が良いかもしれませんが、ちょっと分かる範囲で、書いておきます。先述のように改名して出来たバンドですが、本作品でのメンバーはDennis Duck(DD), Fredrik Nilsen(FN), Tom Recchion(TR)のトリオになっています。また、曲によって担当楽器も代わっているみたいで、余計、このバンドを解説する上で混乱させるものとなっています。曲と担当楽器を以下の通りです。A-1”Zombie” DD (Dr, Clanking, Piano, Thunder Sheet), TR (Organ, Cello, Harmonium, Pipe-Org, Grand-Piano, Banjo, Clanking), FN (Cornet, Clanking) A-2”I Got A Right To Sing The Blu” FN (Cross String G, Mouth Piece, Chop Stick Perc, Box O’Bells, Ding Dong Bells, Edit), DD (Balloons, Whistles, Clicker), TR (Tapes, TapeLoops, Science Fare Org) Brent Wilcox (Live Engineer), A-3”The Flying Eyes” TR (Street Cleaner Bristles, Analog Delay, Metal, Strungaphone, Bells, Piano, Auto-Harp, Kalimba, Fake Koto), DD (Balloons, Claves, whistles, Metal, Clicker, Auto-Harp, Squeals), FN (Triangle, Chains, Bels, Vibrator, Electricity, Cross String G, Tambourine, Whistle, Pipes), Rick Potts (Radio), A-4”Baby” DD (Dr, Poem Electrique), FN (B), TR (Hammond Org), A-5”Bird And Bee Orchestra” (Doo-Dooettes, Kevin Laffey, Joseph Jacobs)。B-1”Schlagerzeit” DD (Piano, Tape), FN (Cornet), TR (Dr, Hammond Org), Rick Potts (Ding Dong Bells), B-2”Dr. Phibes Visits Chicago DD (B), TR (Grand Piano), FN (G), B-3”Scrapyard” TR (Water, Bubbles, Pupe, Air, Dribbling, Bells, Kalimba, Cymbals, Claves, Wood & Metal Boxes, Cowbell, Scrapes, Edit, Rearrangement), FN (Cross String G, Mussette, Pipes, Ding Dong Bells, Whistles), DD (Party Chicken, Metal Objects, Maraca, Wood Block, Whistles, Sparkletted Bottles), B-4”Red Wrec. Said” The Bird And Bee Orchestra (Doo-Dooettes, Kevin Laffey, Joseph Jacobs) Final touches by FN & DD, B-5”That Latin” DD (Grand Piano), TR (Dr), FN (B), B-6”Yurei (Elaborations)。取り敢えず、書き出してはみたものの、これじゃあ、何だか訳わかりませんね。まあ、他のLAFMSのバンドと同様に、固定したメンツで固定した楽器を演奏すると言うより、緩いメンバーで、それぞれがその雰囲気に合った楽器を担当し、かつ楽曲っぽくするか?それともフリーミュージックっぽくするか?を決めてやっていくと言う曲の作り方ではないでしょうか(多分?)。それと、本アルバムでは、例えばA-1ではイタリア映画”Zombie”での曲(Georgio TucciとFabio Frizi作曲)をDoo-Dooettes風にアレンジして、とても元曲が分からないようにしたりしてます。また、A-2はLAのラジオ局KCRWのBrent Wilcox氏の番組FRGKでのライブ録音だそうです。そんな遊び心もあるゆる〜くて、気持ちの良い音楽です。坂口氏、言うところの”Slow Life Avant-garde“がピッタリくるバンドだと思います。このバンド名義でもまたリリースして欲しいですね。どうぞ、彼等の音楽で、脳内を緩く攪拌してみて下さい。因みにタイトルとジャケ写は後々のSolid Eyeに対するオマージュでしようか? https://youtu.be/zxDylTF69cE #Doo-Dooettes #TheSolidEye #LisAngelisFreeMusicSociety #DennisDuck #TomRecchion #FredikNilsen #ExperimentalPop #AvanteGarde #TheTwoWhoDoDuets
Experimental music The Solid Eye/L.A.F.M.S. 不明Dr K2
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AMK “Mecca”
限定10部はないでしょ❗️と言う訳で、1980年代中期より活動する米国のAnthony Micheal KingことAMKの登場です。彼はBanned Productionsと言うレーベルも運営しており、The HatersのG.Xe. Jupitter-Larsen氏とも長年に渡り協力関係にあります。バイオグラフィーらしき情報はなく、割と謎の多い人物ですが、1999年に私が西海岸ミニツアーをやった時に、初めて彼に会いました。その第一印象は「変わり者」でした。それまでも、1993年位にお互いに郵便で連絡を取っていたのですが、彼の演奏形態には驚きました。彼はそれをアナログ・モンタージュと呼んでいました。つまり、既存の曲が録音してされている複数枚のソノシートを文字通り切り貼りして、台紙に貼り付け、それをレコードプレイヤーで再生すると言う手法で、当然、針飛びやチリノイズやらに混じって、既存の曲がコラージュされて再生するとなる訳です。或いは溝が違い過ぎて、ちゃんと再生できない。これをもって彼の演奏が始まる訳です。それで、本作品ですが、ラテカット盤なんですが、時々、これは本当の針飛びなのか?録音されたものなのか?と言うことが分からなくなってきます。元々が、ソノシートなので、わからないです。そんな狐に包まれたような音楽体験はどうでしようか? 因みに、この盤を出しているHarbinger Soundは英国のSteve Underwoodが運営するレーベルで、1990年から活動しています。そして、この作品は20枚作って、10枚だけ流通し、残りはAMKが壊して、アナログ・モンタージュに使ったらしいです。 YouTubeには無いので、他の作品で。 https://youtu.be/5n_qX6sKpEM #AMK #Mecca #HarbingerSound #AnalogMontage #LathCut #Noise
Experimental music Harbinger Sound 不明Dr K2
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Hands To “Egress”
君はHands Toを知っているか? 元々、米国のJeph Jermanのソロユニットで、シアトルに引越した1986年から始まっています。ただ、Hands To名義とJeph Jerman名義の作品が段々と区別できなくなってきたので、1990年代終わりにはHands To名義は使わなくなってきています。最初期にはサンプラー、テープ、テープ・ループを使っていたらしいです。Jeph自身も活動が長く、またリリースも多いのですが、基本的には自然の中にある素材(石、木材、砂利、骨、植物のなど)から微弱な音をコンタクトマイクや通常のマイクでフィールド録音し、その素材を割りと無加工のまま、編集によって構築していくスタイルが特徴の物音系ノイズ・アーティストです。以前に紹介したBlowholeは彼のバンド形態の演奏ですが、ソロユニットでは上記のような活動をしています。彼のキャリアからして、もうアメリカの「物音系ノイズのドン」とも言えるでしょう。Hands Toや本人名義の作品は多数リリースされていますので、どれが良いとかは正直分からないのですが、その中から、本作品”Egress”を選んでみました。多分、コンタクトマイクで拾った音が、カサカサ、コソコソ、ガラガラと、殆ど電子的に加工されることなく、そのまま、無造作に配置されたおり、曲名もなく、レコード化されています。このような一種、禁欲的なスタイルが彼の持ち味ですね。余計なものは要らないと言うべきスタイルで、ジャケもカラー写真を貼り付けただけです。また、コピーシートが一枚付いているですが、文字が読みにくくて、内容はよく分かりません。一方、Jephはコラボレーションも多数やっており、私もHands To名義の彼とコラボ7㌅を出しています。彼に言わせると、最初は「アイデアありき」でしたが、その後は「音ありき」にシフトしていったとのこと。ヨーロッパの物音系ノイズとは異なり、埃っぽい感触のノイズ・ミュージックになっています。皆さんも、興味があれば、聴いてみて下さい。渋いですよー。 [YouTubeに無かったので、別の作品を] https://youtu.be/Rm2bKTUSAY8 #HandsTo #Egress #AnomalousRecords #JephJerman #物音系 #FieldRecording
Experimental music Anomalous Records 不明Dr K2
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Borbetomagus & Shaking Ray Levis “Coelacanth”
ご存じ、death jazzの筆頭Borbetomagusが、即興ユニットShaking Ray Levis (SRL)と行なったコラボ曲を収めた10㌅ミニ・アルバムです。しかもカラーピクチャー盤で、1000枚限定です。Borbetomagusはいつものメンバーで、サックスにJim SauterとDon Dietrich、ギターにDonald Millerと言う鉄壁の布陣です。対するSRLの方はDennis Palmer (Electronics, Synth)とBob Stagner (Dr)のデュオです。Borbetomagusについては既に書いているので、ここでは、SRLについてちょっとだけ。テネシー州出身の彼等はfree improvisationを実践しているデュオで、アメリカ人として、初めてIncus Records (Derek Baileyのフリー・インプロ専門の英国レーベル)から出したことがある実力者でもあります。John Zorn, David Greenberger, Killick Erik Hinds, Fred Frith, Min Tanaka, Amy DenioそしてDerek Baileyと一緒にコラボライブや録音をしたことがあります。しかしながら、Dennisが2013年2月15日に亡くなっています。 それで、このミニアルバムですが、一言で言うと、3曲ともドンチャン騒ぎですね。ボルビドのテンションの高さに加えて、シンセやドラムが好き勝手にと言うかボルビドに立ち向かうように挑んだ球、どんちゃん騒ぎになってしまったと言う。でも、そこは、それ。ちゃんとセーブするところなどもあってスリリングでもあります。しかし、アメリカの闇は深いわぁ。こんな逸材がいるなんて!因みにピクチャー盤のアートワークはDennisによるものです。書いてある魚がタイトル曲の「シーラカンス」なんでしようかね。もう二度とセッションが不可能になった、この2バンドのコラボライブは本作品でしか聴けませんので、中古で探して下さい。 YouTubeにはなかったので、それぞれのライブを。 [Derek Bailey & Shaking Ray Levis] https://youtu.be/Nm2hAFAZayk [Borbetomagus] https://youtu.be/-VwBMyrIPzE #Borbetomagus #ShakingRayLevis #Coelacanth #DeathJazz #Drum #Electronics #Picture10inch #FreeImprovisation #Noise
Experimental music Agaric Records 不明Dr K2
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Laughing Hands “Ledge”
実験音楽界におけるオーストラリアの存在はちょっと不思議な立ち位置にあるように思います。そんな中で、SPKを除いて、1980年代初頭に活動していたのが、このLaughing Handsです。メンバーは、Gordon Harvey (B, G, 加工), Ian Russell (加工G, Vo, Electronics), Paul Schütze (Synth, Perc, Dr), Paul Widdicombe (E-piano, Synth, 加工)の4人からなり、1980-1983年の間、豪メルボルンを中心に活動していました。彼等の名前が最も知られたのは、独逸Selektionがリリースした国際コンピ”Masse Mensch”ではないでしょうか?後に、独逸Vinyl-On-Demandが彼等のカセット音源を中心にしたアーカイブLPセットをリイシューしていますが、私は未聴なのです。また、ググってもこれ以上の情報は不明です。 それで、本作品ですが、彼等の担当楽器からも想像できるように、ロックのフォーマットでの実験・即興音楽の実践であると考えます。不明瞭な音像が交錯する曲が14曲収められおり、丁度、DomeとSmegmaが交配したアブストラクトなミュータント音楽を奏でているみたいです。インダストリアルでは無く、ポスト・インダストリアルですね。即興セッションで出来た音源をミックスダウンの時にメンバーの2人(HarveyとWiddicombe)が加工しています。また、音の感触は、当時の日本のDD. Recordsのアーティストが実践したような無軌道さにも共通するように思われます。長い間、日の目を見なかった彼等ですが,ここにきて、もう一度、評価してみてはどうでしょうか?因みに、当時の彼等の作品は全て、彼等自身のレーベルAdhesiveからリリースされています。 https://youtu.be/vBiOPj-xqkA #LaughingHands #Ledge #Adhesive, #PostIndustrial #Australia #Treatments
Experimental music Adhesive 不明Dr K2
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V.A. “Subterranean Modern”
Gary Panterのカラフルなジャケ写で登場したのは米国西海岸の謎4組によるコンピレーション “Subterranean Modern”です。収録バンドは、Chrome, MX-80 Sound, The ResidentsとTuxedomoonです。そして、一つの縛りとして「思い出のサンフランシスコ(I Left My Heart in San Francisco)」のカバーを入れることです。ChromeとThe Residentsは以前に紹介しましたので、MX-80 SoundとTuxedomoonについて少し紹介しておきます。先ず、MX-80 Soundは、1974年にインディアナ州Bloomingtonで Bruce Anderson (G)とDale Sophiea (B)で結成され、翌年Jeff Armour (Dr)とKevin Teare (Dr)が加入して,その後、1976年にRich Stim (Vo, G, Sax)とDave Mahoney (Dr)が加入して、Teareが脱退しました。このようなメンツで地元で演奏しようとしていましたが、彼等の音楽はart rockとかpost punkとかacid punkとか言われてカテゴライズされなかった為、演奏する場が無くなり,またJeff Armourも脱退し、バンドは1978年にSFに移住し、そこでThe ResidentsのレーベルRalph Recordsと契約しました。それで何枚かのレコードをリリースし、その後、メンバーの補充や再加入を経て、現在でも活動中です。一方、Tuxedomoonですが、1977年にSFで、サンフランシスコ市立大学の電子音楽科の学生であったBlaine L. Reininger (Kbd, violin)とSteven Brown (Kbd, other instruments)で結成され、ヘルプのVoとしてGregory CruikshankとVictoria Loweが、パフォーマンス・アーティストとしてWinston Tongが加入。名曲”No Tears”の録音時に、 Michael Belfer (G)とPaul Zahl (Dr)がヘルプで加入しましたが、TongとBelferは一時脱退し、代わりにPeter Principle (B: 本名 Peter Dachert)が正式に加入しています。彼等の音楽は、ジャズやフュージョンからニューウェーブ・ポップ、はたまたシンセによる実験的音楽までに及び、1979年にRalf Recordsと契約しました。彼等のレコードはオランダやベルギーで受けたこともあって、バンドはベルギーのブリュッセルに移住し、現在も活動を続けています。 そこで、本作品についてですが、前述のように「思い出のサンフランシスコ」のカバーを必ず含むと言う縛りがあったのですが、4者4様のアレンジです。僅か27秒の儚くも美しいカバー(?)のChrome、一番まともなカバーを披露するMX-80 Sound、完全に自分達のオリジナルっぽくカバーしたThe Residentsそして電話の会話に合わせて薄ーく流れるTuxedomoon、誰も一筋縄ではなきカバーです。残りの曲はそれぞれの音楽性が遺憾なく発揮されています。Chromeは丁度”Red Exposure”辺りのアシッド・サイケな曲を、MX-80 Soundはダブルドラムによる分厚い音の壁を、The Residentsはいつもの変態アレンジの曲を、Tuxedomoonは室内楽の様な一風変わった曲を提供してます。もし、聴く機会があれば,聴き比べてみて下さい。 https://youtu.be/IbbZxBs0e4E #SubterraneanModern #Chrome #MX-80Sound #TheResidents #Tuxedomoon #RalfRecords #ILeftMyHeartInSanFrancisco
Experimental music Ralph Records 不明Dr K2
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Étant Donnés “Le Soleil, La Mer, Le Coeur Et Les Étoiles“
また出ました!フランスが世界に誇る「観る実験音楽」デュオÉtant Donnésの再登場です。 メンバーはEric & Marc Hurtado兄弟ですが、前回にバイオグラフィーは書きましたので、そちらを参考にして下さい。本作品は彼等が1982年に作製した長尺の曲を2曲に分けて収録した作品で、赤盤で200枚限定でのリバイス作品です。またリリースはRotoreliefからのシリーズですので、ジャケのデザインとかは統一されています。今回は声はないですが、強靭な意志を持った音塊が無秩序にコラージュされており、一時期のSchimpfluchにも通じるものがあります。また、テープ操作もプリミティブながら、かなりの強度があり、爆音で聴きたいものですね。と言うか、やはり、ビデオで観たいものです(蘭Staalplaatからはビデオが出ていますが、私は未見です)。この作品はおそらく,後の「エタン・ドネ演劇」と言われるパフォーマンスの元になった音楽の原点なのかもしれませんね。磁気テープの磁場が凄いので、体調の良い時に聴くことをお勧めします。そんなストイックかつストロングな彼等の音楽を試しに聴いてみて下さい。 A “Le Soleil, La Mer, Le Coeur Et Les Etoiles” (22:30) B “Le Soleil, La Mer, Le Coeur Et Les Etoiles” (22:30) “Le Soleil, La Mer, Le Coeur Et Les Etoiles” https://youtu.be/oig_k_BGUE8?si=U5G45e5fVNVjx5vN “Le Soleil, La Mer, Le Coeur Et Les Etoiles” https://youtu.be/pbLU5sWaxpU?si=b4-eIqwzjKzSyE-K “Le Soleil, La Mer, Le Coeur Et Les Etoiles” https://youtu.be/QVNgeCga0Eg?si=qUi-HY5qw1cBVCWJ #ÉtantDonnés #LeSoleilLaMerLeCoeurEtLesÉtoiles #Experimental #Avant-Garde #MagneticTapes #肉体 #Rotorelief #ArchivesDesMusiquesIndustriellesDeFrance #TheatricalPerformance #1982年 #PreviouslyUnreleasedTrack #EricHurtado #MarcHurtado
Experimental music Rotorelif 不明Dr K2
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Barbara Proksch “Opto_Phon”
これは試聴して気に入ったので購入したBarbara Prokschのソロ・ワークです。Barbara Prokschは1943年ベルリン生まれのヴィジュアル・アーティストで、1982年からドローイングを中心にフリーランスとして活動しています。現在は、バイエルン自由州に在住。本作品は、ドローイング中に発生する音、またそれが結果として作品に与える影響に気づき開始したという、楽器として使われる特定の道具や素材を使ったドローイング・サウンドパフォーマンスの録音となります。その際使われたスクレーパー、ブラシ、ペン、ナイフ、小枝など様々なツールと支持体に付けられたコンタクト・マイクで、ガキガキ、ゴロゴロした硬質な音が表情豊かに収められています。特に、A面にはチェコの教会での初演時の抜粋が収められているのですが、協会の残響音によって、更に広がりのある音楽になっています(これは必聴ですね)。絵を描くことで生み出される音を、更に聴くことで、絵の方にも影響を与えると言うフィードバックからの音で、うるさくなったJeff Jermanとようにも聴くことは可能かと思いますが、コンセプトは面白いですね。また、B面には、ミシンの音を増幅した音源を使っています。時として視覚芸術のアーティストが演る「音楽」が興味深いことがありますが、本作品もその一つだと言えるでしょう。ビジュアル/オーディオの芸術に興味がある方は勿論、物音系ノイズに興味のある方も是非聴いてみてください。なお,300枚限定ですので、お早めに! A1 “Echoräume Der Unzählbarkeit” (11:01) “Zeile Für Zeile ... Schritt Um Schritt” (A2-4 medley) A2 “Laufschritt” (5:49) A3 “Tastschritt” (3:34) A4 “Versplitterung” (3:21) B “Räderwerk Durch Zeitzonen” (23:33) [“Opto_Phon”performance (2006)] https://youtu.be/8qdYh06gZiY?si=OiPjD-2FEcgM6v_4 B “Räderwerk Durch Zeitzonen” (23:33) https://youtu.be/2z4IAjnY3IY?si=qDlbOD7OdEqxrw2G #BarbaraProksch #Opto_Phon #EditionTelemark #LimitedEditions #300部 #Experimental #VisualArtist #ContactMic #物音系 #SoundArt #Salching #Performance #AmplifiedSewingMachine
Experimental music Edition Telemark 3420円Dr K2