Sissy Spacek “Entrance”

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今回は、出来立てほやほやのSissy Spacekの新譜”Entrance”をご紹介します。元々、Sissy Spacekは、米国LAのJohn Weise (B, Vo)とCharlie Mumma (Drs, Vo)から成るグラインド・コア・バンドとして始まりましたが、やがて、実験音楽的要素を取り入れるようになり、異形のバンドへと変貌していきます。今回は、先述の2人以外に、元P16.D4のリーダーであったRLWことRalf Wehowskyが参加していることが話題ではないでしょうか!それに加えて、日本からは実験ターンテーブリスト毛利桂さんも参加。また、奇才C. Spencer YehやAaron Hemphill, Brad Laner, Marco Fusinato, Tim Barnesも参加しており、更に、各面1曲ずつと言う、グラインド・コアからしたら信じられないような物理量であることも特筆すべき点であり、それだけで期待値爆上がりしてしまいますね。レーベル側の宣伝文を読むと、バンド結成26周年記念の作品であり、元々の音源は、John WeiseとCharlie Mummaが即興的に演奏した時に録音したものを使っているらしいのですが、コラボレーターである外部のミュージシャンによって、それらの音源は大きく変調・加工され、結果として、ミュージック・コンクレートのような、極めて実験的な音楽に仕上がったとのことです。特に、Ralf Wehowskyは新たなコラボレーターであったようで、それも大いに関係しているとのこと。それだけではなく、現在、米国実験音楽界で大活躍のJohn Weiseのコンセプトやテープ操作も本作品に大きく関わっているとのことです(実際、JohnはLAFMSにも関わっていますし、サウンド・エンジニアとしても活躍しています)。ロックを解体し、ミュージック・コンクレートとして再構築した、新たな「ロック」が本作品には詰め込まれています。
 それで、内容ですが、先ず、A面は、いきなり、不協和音のピアノらしき打撃音から始まり、とてもグラインド・コアの演奏を加工したとは思えないような静謐かつ緻密な音響工作的な曲であり、物音のようなノイズや完全に加工され尽くされた演奏等が絶妙に配置されています。C. Spencer YehのVlnらしき音や変調された会話等、この組合せ方は如何にもRalf Wehowskyが行ったのではないか?と思わせる出来です。
 B面も、テープ操作から、歪んだBや細切れのSaxやホーンやファズG、リズムを刻まない金属製打楽器(ここら辺はCharlie Mumma的)、更には物音系ノイズやフィールド録音等が緻密に組み合わさったミュージック・コンクレート曲になっています。時々、2人の演奏らしき音源の断片が挿入されるのもグーですし、ゆったりとした音や間、騒がしい音、時に暴発する音等、起伏の激しさもロック的に感じます!
 C面は、ドラムの即興演奏の断片が収められていますが、あくまでも裁断されたサウンド要素としてであり、その間には、キリキリとしたVlnの軋みやフルート、ヴォイス、再生速度を極端に変えた演奏、更には正体不明なノイズがパラパラ漫画のような速さで展開しており、見事にアタックのあるミュージック・コンクリートに仕上がっています。ある意味、最も「ロック的」な曲かも知れません。
 D面は、不穏なオルガンとDrsの演奏から始まり、比較的ゆったりとしたドローン的展開と騒がしいグラインド・コア的展開とが上手く組み合さった曲で、時に分離し、時に重なり合い、また、電子音にも似た音源操作も加わって、カラフルな曲構成になっています。
 この作品はSissy Spacekが行き着いた、彼等の実験音楽としての到達点なのかも知れませんね。特に、Ralf Wehowskyの参加は、論理的ミュージック・コンクレート的曲の制作に当たって、かなり大きな影響を与えたのではないでしょうか!? なので、これまでのSissy Spacekのファンからしてみたら、かなり異質な問題作だと思います!! ファンの方は覚悟して聴かれた方が良いかも!逆に、本作品はRLWファンには必聴ですね!

◼️LP1
★A “Web Of Unfolding Appearance” (9:53)
参加者: Charlie Mumma, John Wiese, Katsura Mouri, Ralf Wehowsky, Aaron Hemphill, C. Spencer Yeh
★B “Figure Of Reflected Light” (17:46)
参加者: Charlie Mumma, John Wiese, Brad Laner, C. Spencer Yeh, Marco Fusinato
◼️LP2
★C “Trancher And The Inheritors” (17:51)
参加者: Charlie Mumma, John Wiese, C. Spencer Yeh, Tim Barnes
★D “True Dimension (From The Opaque-Spike)” (16:13)
参加者: Charlie Mumma, John Wiese, Ralf Wehowsky

A “Web Of Unfolding Appearance” (9:53)
https://youtu.be/mefDOV4w2zI?si=_na8n9Bm4O4d60-_

B “Figure Of Reflected Light” (17:46)
https://youtu.be/2nlwwNYzie4?si=PFdI2JmxeVaUwwnj

C “Trancher And The Inheritors” (17:51)
https://youtu.be/iSTbGwn1iMo?si=6db7ZUmpSHkPApTs

D “True Dimension (From The Opaque-Spike)” (16:13)
https://youtu.be/7naqPutCmg8?si=iyMUuG5RP3sfXWWM

[BandcampのURLも貼っておきます]
https://sissyspacek.bandcamp.com/album/entrance

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