角川書店 角川文庫 死神の矢

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昭和五十一年五月二十日 初版発行
昭和五十二年九月三十日 九版発行
発行所 株式会社角川書店

昭和31年(1956年)に雑誌「面白俱楽部」に掲載された短編を、同年に長編化した横溝正史の長編小説「死神の矢」。
金田一耕助と親交がある高名な考古学者・古館博士が開催した酔狂な弓勢くらべ。それには博士の愛娘に求婚している3人の若者たちの中から花婿を選ぶという目的があったが、弓勢くらべの後、参加した3人の若者たちが次々と殺されていった...
美人の令嬢ヒロインに求婚する男たちが次々に殺されていくという、「女王蜂」によく似たシチュエーションの作品ですね。しかも、こちらにも「女王蜂」の神尾秀子に相当するキャラクターがいたりして、その印象をより一層強いものにしていますが、「女王蜂」に見られたような舞台設定や登場人物の華やかさこそ無いものの、その読後感はどこか感動的ですらあり、「女王蜂」とはまた違った感懐を抱く作品となっています。
本書には表題作の他に短編「蝙蝠と蛞蝓」が併録されています。こちらも“金田一もの”ですが、一人称で語られる構成が特徴の異色作です。角川文庫には昭和51年(1976年)に収録されました。
画像は昭和52年(1977年)に角川書店より刊行された「角川文庫 死神の矢」です。事件の端緒となった弓勢くらべを具象化した、赤い矢が突き刺さったハートのクイーンのカード。暗雲垂れ込める洋上に浮かぶ女の暗い表情が、何とも不穏な空気を醸成しています。

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