月報 日本ウェストミンスター 1950年代

0

LP時代に入ったアメリカでは、新興のマイナー・レーベルが続々と誕生しましたが、その中でも最も成功したのがウェストミンスターでしょう。このレーベルを国内販売すべく設立されたのが「日本ウェストミンスター(株)」ですが、当初は国際ラジオセンター(貸スタジオの会社)のレコード部として発足しました。この時点では日本楽器が販売を担当していました。1955年12月には日本ウェストミンスター(株)が設立され、日蓄工業(コロムビア系列)が販売を担うようになります。

このレーベルの特徴は、1.初録音ものを多く狙う、2.戦後ほとんど紹介されていなかったウィーンの演奏家を積極的に起用、3.録音の良さが売り、といったところですが、1について補足すると、LP創生期ですから「LP初登場」という曲は数多くありましたし、故岡俊雄さんの名著「マイクログルーヴからデジタルへ」には、初録音ものはアメリカ中の図書館や学校の多くが購入するので、手堅い商売になったという記述がありました。

国内盤も最初からLP専門の会社(SPは作らない)としてスタートしましたが、クラリネットのレオポルド・ウラッハの吹いたモーツァルトの五重奏曲などは、今でも名盤と言われていますし、室内楽には優れたレコードがたくさんありました。個人的には、フランツ・コッホのブラームス/ホルン三重奏曲は何度も聴いたものです。コッホは月報解説にはウィーン・フィルと書かれていますが、正しくはウィーン交響楽団の首席奏者だった人です。ここで聴かれるホルンの音色は、間違いなくF管ヴィーナー・ホルンのもので、この時代はウィーン交響楽団も伝統的な古い楽器を使っていたことが判ります。(今はウィーン・フィルだけになってしまいました)
音が売りということもあり、「ラボラトリー・シリーズ」という企画がありましたが、これは収録時間を少なめにし、盤面をたっぷり使ってラウド・カッテイングしたものでした。(Dレンジ、Fレンジの拡張)

ラインスドルフによるモーツァルト交響曲全集がこのレーベルに残されていますが、なんと「交響曲第37番」などという曲が含まれています。

1957年8月から VEGA レーベル(現代音楽とシャンソン)が、同年12月から nixa レーベルが加わります。後者はイギリスのパイ・レコードが原盤ですが、この時点ではレーベル限定の契約だったため、1950年代は nixa レーベルとして販売され、1960年9月新譜以降 PYE レーベルに変更されます。このレーベルからは、ロニー・ドネガン(スキッフル)のEP盤など、こんなものが発売されていたのかというものが含まれていますので、ポピュラー・ファンも要チェックです。数は少ないですが、国内制作盤もありました。

その後1958年末頃には販売を日本コロムビアに移管し、1959年3月新譜からはコロムビアの月報に吸収されます。

#アナログレコード
#レコード資料

Default