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smc PENTAX-F 1:2.8 100mm MACRO
1984年末に登場したミノルタのα7000は本格的なAFを備えた一眼レフシステムとして業界をひっくり返すほどの衝撃を持って迎えられました。他社は全て,ミノルタを追う立場となり,Pentaxも総力を結集し,ミノルタに遅れること約2年,1987年に最初のAFフィルムカメラであるSFXを世に送ります。SFXではそれ以前のMFレンズ用の自動露出に対応したKAマウントに上位互換なKAFマウントを採用します。これにあわせてPentax-Fレンズシリーズを展開しました。 1991年にはAF第二世代モデルであるZ-10が登場し,マウントもKAF2に,レンズもPentax-FAシリーズに刷新されます。そのため,Fレンズは5年ほどの短命に終わってしまいます。 smc Pentax-F 100mm F2.8 MacroはFシリーズレンズとしてPentax最初の100mm等倍マクロです。生産期間はFレンズが展開された1987年から1991年までであったために,意外にもレアです。前世代のAEに対応したsmc Pentax-A 100mm F2.8 Macroが希少性ゆえに中古市場ではかなり高価で取引されています。しかし,どういうわけかF 100mm F2.8 Macroは同様に希少であるにもかかわらず,その希少性は価格にまったく反映されていません。 これは,AFをアピールするあまり,非常に狭い幅のMF用距離環が鏡筒先端にとりつけられており,いまひとつ高級感が感じられない鏡筒のデザイン(作りは決して悪くないのに),見た目以上に重いことなどネガティブな要素が多いことが原因ではないか,と想像します。 100mm F2.8の等倍マクロはAレンズから登場し,FレンズでAF化されるとともに光学設計も変更されています。その後,FA, D-FAへと時代とともに同スペックのレンズは変遷していきますが基本設計はFレンズのままです。その意味では,PentaxとしてはFレンズにおいて100mm F2.8 Macroはひとつの完成形であったのかもしれません。 この個体をいつ,どこで入手したのかまったく記憶にありません。おそらく,中古店でとても安い値段で投げ売りされていたことに惹かれて思わず買ったのに違いありません。当然のように,このレンズで何を撮ったのか,これといった記憶もありません。防湿庫の奥から発掘されて,そういえばこのレンズを買ったよな,ということだけを思い出しました。 Muuseoに展示するためにレンズの来歴を調べてみて,意外なレンズの背景を知ることとなりました。もはや写真を撮るという目的からは大幅に外れていますが,これはこれで楽しいかな,と。 #レンズ #AF #smc_PENTAX-F #PK #PKAF #Pentax #100mm #F2.8 #望遠 #単焦点 #マクロ
AFレンズ PKAF PentaxMOR
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Contarex Distagon 25mm F2.8
Contarex用の広角レンズです。Contarex用レンズは主な焦点距離において明るい(F値が小さい)ラインと暗いラインの二本立てになっていました。明るいレンズとして35mm F2, Planar 55mm F1.4, Planar 85mm F1.4, Sonnar 135mm F2.8がラインナップされ,暗いレンズとしてDistagon 35mm F4, Planar 50mm F2, Sonnar 85mm F2, Sonnar 135mm F4というラインナップでした。しかし,これらのレンズよりも広角または望遠側のレンズについてはさすがに需要が少ないということもあってか1つの焦点距離に対して1つのF値というラインナップでした。 レンジファインダーのContax用のレンズ(Contax Cマウントレンズ)では広角は(おおよそ)対称型のBiogonでした。しかし,一眼レフでは長いバックフォーカスが必要となるため,Contarexではレトロフォーカス型のDistagonがラインナップされていました。現在では標準ズームの広角端にすぎない25mmもContarexが登場した1960年代は超広角レンズという扱いでした。また,Carl ZeissのレンズはBiogonの時代から超広角は24mmではなく25mmという焦点距離のレンズをラインナップしていて,それは現在まで続いています。NikonやCanonもレンジファインダーカメラの時代には25mmをラインナップしていましたが一眼レフの時代になると24mmになっています。 Contarex用の(当時としては)超広角レンズであるDistagon 25mmはかなり特殊な位置づけと認識されていたのか,明るさ(開放F値)は1種類だけで中庸を狙ったF2.8のものが1963年にリリースされています。前期のクローム鏡筒のものと,後期の黒鏡筒のものがあり,Wikipediaによると両者をあわせて6,630本生産されたということです。Alpaのレンズを見ていると十分に多い数字に見えてしまいますが,Zeissが自前のカメラ事業から撤退した1973年までの約10年間の生産数とすると,平均して1年に660本あまりしか生産されておらず,工業製品としてみるとその生産数は非常に少ないと言えます。実際,超レアというほどではないにしても,十分にレアな部類に入るレンズだと思います。 手元の個体は写真に見る通りクローム鏡筒の前期型で,最短撮影距離は17cmでほとんど広角マクロとして使えるレベルの近接能力をもっています。寄れる,ということは撮影の幅が広がるということで使い勝手がよいレンズです。しかし,古い時代の広角レンズにありがちな周辺光量落ちや逆光耐性の低さは普通にありますから,これらの要素をレンズの味として楽しめなければ使いにくいかもしれません。 このレンズによる作例は https://mor-s-photo.blogspot.com/search/label/Distagon%201%3A2.8%20f%3D25mm に置いています。 #レンズ #MF #Distagon #Contarex #Carl_Zeiss #25mm #F2.8 #広角 #単焦点
MFレンズ Contarex Carl ZeissMOR
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ALPA ALFITAR 90mm F2.5
シネレンズで有名な,フランスのAngenieuxがAlpaカメラ向けに供給したレンズの一つです。AlfitarはAlpaカメラ用のレンズとしては生産数は多いほうだと思いますが,そもそもAlpaカメラの絶対数が少ないのでいつでもどこでも見かける,という性質のレンズではありません。 このレンズは4群4枚のエルノスター型構成でエグザクタマウント等の他マウントにラインナップされていたType Y12と同じ光学系だと思われます。絞りは鏡筒にあるダイアルを回転させる独特の仕様です。Alpa用のAlfitarはクローム鏡筒の前期型と黒鏡筒になった後期型に大きくわけることができます。この個体は写真のとおり前期型です。クローム鏡筒の仕上げはたいへん上質で,Alpaカメラ用に作られたレンズ,という趣きを持っています。 #レンズ #MF #P.Angenieux #Alpa #90mm #F2.5 #望遠 #単焦点
MFレンズ Alpa P.AngenieuxMOR
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HEXANON AR 35mm F2
Hexanon 35mm F2は小西六の最初の一眼レフカメラKonica F以来,最後までラインナップされていたレンズです。ネット上の情報によると,Konica Fマウントで1960年に登場したものの1965年のARマウントへの変更後もKonica Fマウントのまま放置され,Autoreflex T3が登場する1973年頃にようやくARマウント版が登場したようです。Konica Fマウント版はほとんど幻のレンズといってよいと思われます。 ARマウントの35mm F2は最初,金属製の距離環をもつEE版として登場し,その後,他のレンズと同様にゴム巻きの距離環に変更され,AE版に更新されます。Konica Fマウント版ほどではないにしても,ARマウント版も生産数はかなり少ないようで,eBayやヤフオク!をパトロールしていてもほとんど見かけません。eBayに出品されているものはかなり高い値付けのものが多いようです。レアだからといって高値でも売れるわけでもなく,なんだか微妙な位置付けのレンズです。写りは,ズミクロンのようだ,という人もいるようですが,私のように感性が鈍い人にはそのあたりのことはあまりわかりません。 手元の個体は,金属ローレットのついたEE版です。外観は結構きれいですが,ヘリコイドの動きは少し引っ掛かりを感じることがあるので必ずしも調子がよいわけではありません。数が少ないので状態の良いものを見つけること自体が難しいのでしょうがないんだろう,と思っています。 #レンズ #MF #Hexanon #AR #Konica #35mm #F2 #広角 #単焦点 #大口径
MFレンズ AR KonicaMOR
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HEXANON AR 85mm F1.8
小西六の一眼レフカメラ用85mmレンズは1960年に登場した最初の一眼レフカメラKonica Fおよび他の3本のレンズとともに登場します。ネット上の噂(?)によると,Konica Fは1500台ほど生産され,初代の85mm F1.8レンズは500台ほどの生産数だったようです。1965年に登場したAutoReflexからマウントがARマウントに変わりますが,85mm F1.8もマウントを変えてコニカの一眼レフの最後までラインナップされます。ARマウントの85mm F1.8は,フィルタ径が58mmのEE版ではじまりますが,その後,フィルタ径はコニカの標準である55mmに変更されます。さらに,鏡筒の意匠がクロームのリングがあるものから全体が黒色のものになり,意匠はオールブラックのまま,最後のAE版が登場しています。 レンズ構成は5群6枚の拡張ダブルガウス型で,この時代の大口径中望遠レンズによく見られる構成です。85mm F1.8はコニカの一眼レフの望遠レンズのなかでは最も大口径でポートレートで用いることを意識したレンズでした。もうひとつの大口径望遠レンズであった135mm F2.5は今でも簡単に見つけることができますが,85mm F1.8はあまり見かけません。 手元の個体はこのレンズのなかでは最後期にあたるAE版です。85mm F1.8は探してみるとなかなか見つからなくてARマウントレンズのわりには高価だったりしますが,たまたまeBayでフランスから出品されているのを見つけて入手しました。外観は非常にきれいなのですが,距離環が非常に重く,ピント合わせがたいへんです。ただ固着しているというわけでもないのでどうにかなるかな,という感じです。 #レンズ #MF #Hexanon #AR #Konica #85mm #F1.8 #望遠 #単焦点 #大口径
MFレンズ AR KonicaMOR
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KONISHIROKU HEXANON 1:2 f=50mm
1960年の終わり頃(12月?)に廉価版として登場したKonica FS用のセットレンズとして50mm F2は登場します。ちょっとはっきりしないのですが,このレンズの登場は1962年のようで,FSの登場時期と一致していません。Konica Fのセットレンズは52mm F1.4でしたから当初FSも52mm F1.4をセットレンズとしていたものの価格を下げるために後から50mm F2が投入されたのかもしれません。しかしながら,1962年の秋にはKonica FPが登場し,そのセットレンズは52mm F1.8に変更され,50mm F2はディスコンになります。このようなことから50mm F2がFSにセットされて販売された期間がどのくらいだったのか,今ひとつ判然としないのですが販売期間が極めて短かったこと,単体では販売されていな可能性が高いこと,は容易に想像されます。結果として,このレンズはコニカFマウントレンズのなかでもかなりレアなレンズです。とは言え,コニカFマウントのレンズ自体の数がそれほど多くはないので,52mm F1.8以外はいずれのレンズもそれなりにレアであると言えるかもしれません。 もうひとつ,この50mm F2について特筆すべき点は,コニカの一眼レフ用のレンズとして,ARマウントレンズも含めて50mm F2というスペックのレンズは後にも先にも存在していない,ということです。50mm F2なんていかにも廉価版レンズの王道をいくスペックでいくらでもありそうなのですが,コニカの一眼レフに関して言えば,1962年頃にそれほど多くない数が販売されたこのレンズが50mm F2というスペックの唯一のレンズなのです。 ネット上の情報によるとこのレンズのバリエーションは距離環がfeet表示のものとmeter表示の二種類だけのようです。販売期間が短かったことを考えるとそれ以上のバリエーションがあったとはちょっと考えにくいので,実際,仕向地ごとのバリエーションしか存在しなかったものと思われます。やたらと細かい違いのバリエーションが多いコニカ(小西六)にしては珍しいパターンです。 この個体はヤフオクでたまたま見つけたので入手しました。やや高い値付けでしたが,次にいつ見つけられるかわからない,ということもあって入札しました。レアなレンズであることは間違いありませんが,古い時代の廉価版レンズだし,そもそも使い道があるのかないのかわからないコニカFマウントだし,でなんとも微妙な値付けでした。 #レンズ #MF #Hexanon #KonicaF #Konishiroku #50mm #F2 #標準 #単焦点
MFレンズ Konica F KonishirokuMOR
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Topcor-S 5cm F2
1957年頃に発売されたレオタックスTVやその後のFVについていたレンズです。Topcor-S 5cm F2はSがつかない初期型,Sがついた白鏡筒の前期型,黒絞りの中期型,黒鏡筒の後期型と変遷します。中期型までが真鍮製の鏡筒で,それぞれ異なる光学系で写りも異なるようです。巷では中期型の写りがもっともよい,という話もあります。 戦前からの光学メーカーとしては東京光学と日本光学が有名で,陸のトーコー,海のニッコーと戦時中は呼ばれたようにそれぞれ陸軍や海軍に光学機器を納めていました。東京光学は1981年に民生用カメラ事業から撤退し医療機器や測量機器などに特化します。1989年にはブランド名だったトプコンが社名となり,2008年には測量機器メーカーのソキアを完全子会社化して測量機器部門を強化しています。一方の日本光学はニコンと社名を変え,現在もカメラやカメラ用レンズを製造しています。 東京光学は当初はバルナックライカコピーのレオタックスにTopcorレンズを供給するのみで自前のカメラは作っていませんでした。しかし,1954年のM型ライカ(M3)の登場によりバルナックライカが時代遅れになったため,日本のカメラメーカーは一斉に一眼レフに向かいます。その流れにあわせるように東京光学は1957年にexaktaマウントを採用したペンタプリズム付きフォーカルプレーン式一眼レフカメラTopcon Rを発売します。レオタックスカメラはそれと相前後する1959年に倒産します。それ以降,東京光学は一眼レフカメラとそのレンズの製造を1981年まで続けています。 東京光学がL39マウント用のレンズをいつから作っていたのかよくわかりませんが,M3が出るまでの1950年代前半が全盛期だったと想像されます。黒絞りの中期型Topcor-S 5cm F2が出た頃は既にバルナックライカコピーのレンジファインダーカメラの終焉が予見されはじめていたと思われます。その一方で,十分に熟して充実した内容のレンズが作れるようになったタイミングだったといえるのかもしれません。 Topcor-S 5cm F2は4群6枚構成の典型的なダブルガウス型のレンズです。この個体は絞りを閉じていくと開口部が少し歪な形になってしまいます。おかげで相場より少し安く入手できました。絞り羽根が歪んでいるようなので,きちんと整備をしないと寿命を縮めることになることはわかっているのですが,実用上の支障がないためついつい横着をして放置したままでいます。 このレンズによる作例は https://mor-s-photo.blogspot.com/search/label/Topcor-S%201%3A2%20f%3D5cm に置いています。 #レンズ #MF #Topcor #L39 #Tokyo_Kogaku #50mm #F2 #標準 #単焦点
MFレンズ L39 Tokyo KogakuMOR
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KERN-MACRO-SWITAR 50mm F1.8 AR
Kern Aarauはシネレンズのメーカーでスチル用のレンズはAlpaに供給した標準レンズのみです。Macro Switarはアポクロマートで1/3倍まで寄れる明るいマクロレンズとして当時の時代の先端をいくレンズでした。大きく分けて3つのバージョンがあって,マクロじゃないSwitar F1.8 (自動絞りのつかない初期型,自動絞りがついた前期型) , 最短撮影距離が短くなったMacro Switar F1.8 (中期型-I), そして,なぜか開放F値が暗くなったMacro Switar F1.9 (後期型)です。これ以外に,F1.8のMacro SwitarにはF1.9と同じ5群8枚のモデル(中期型-II, マクロじゃないSwitarとその後のMacro Switarは5群7枚構成)があるようです。中期型-IIはたぶん超レアものです。 Alpaのカメラとレンズは高価だったために,たいていのレンズの製造数が極端に少なく2桁とか3桁数しか製造されていないレンズがザラにあります。そのなかにあってMacro Switarはカメラの標準レンズとして,というかAlpaカメラを買った人は1本はレンズが必要で,そのなかの多くの人が標準レンズとしてMacro Switar購入した,と想像されます。無茶苦茶高価なレンズであるにもかかわらずかなり多くの人が購入したようで,Alpaカメラを買うような人はあまりお金の細かいことは気にしないのかもしれません。そのため,Alpaマウントレンズとしてはかなり数がでており,中期型のMacro Switarは10,329本も(?)製造されたようです(アルパブックによる)。他にもSchneiderやOld Delft, P. Angénieuxなども標準レンズを供給していましたがそれほど多くの数が出た,というわけではないようです。しかし,それにもかかわらず,Macro Switarの現在の相場はとても高価です。 モノクロで撮るために,Leica M Monochrom (Typ 246)につけてみたのが5枚目の写真です。Alpaカメラ用のシャッターボタンが出っ張っているので見た目はイマイチです。まぁ,出てきた画が重要なので,見た目についてはとやかく言うところではないのですが。 このレンズによる作例は https://mor-s-photo.blogspot.com/search/label/KERN-MACRO-SWITAR%2050mm%20F1.8%20AR に置いています。 #レンズ #MF #Kern_Aarau #Alpa #50mm #F1.8 #標準 #単焦点 #マクロ
MFレンズ Alpa Kern AarauMOR