SKOPAREX 1:3.4/35

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Voigtlanderのベッサマチック用SKOPAREXです。ざっくり言えばBessamatic用の3群4枚の典型的なTessar型であるColor Skopar 50mm F2.8をベースに焦点距離を35mmにしたもの,と言えます。ただし,Bessamaticは一眼レフでミラーがあるため,レンズはバックフォーカスを長くとらねばなりません。そのために,Tessar構成のレンズ前端に2群2枚のレンズを追加して5群6枚構成のレトロフォーカスタイプで設計されています。

Skoparexの祖先はTessar型のColor Skoparですが,これをレトロフォーカスタイプにしたProminent用のSkoparon 35mm F3.5が直接の先祖だと考えられます。マウント形状はDKLと同じであるものの後のBessamaticとは互換性がないVitessa-T用のSkoparet 35mm F3.4となり,いわゆるDKLマウントのBessamatic用のSkoparex 35mm F3.4へと繋がっていきます。

Bessamatic用のSkoparex 35mm F3.4は大きく分けて前期型と後期型があり,前期型はVoigtlanderが出すつもりだったレンジファインダー式カメラとの互換性を考慮して距離計に連動するためのカムが装備されており,最短撮影距離も1mでした。当時は35mmレンズは十分に広角レンズだったと思われますが,広角レンズなのに1mまでしか寄れない,というのはなんのための一眼レフ用レンズなんだ,という中途半端な仕様でした。

その後,レンジファインダー式カメラは実現しないまま,一眼レフカメラが全盛となり,Skoparexも距離計連動のためのカムを捨て,最短撮影距離を40cmとした後期型になります。最短撮影距離がどうしても長くなってしまうビハインドシャッター方式のBessamatic機のなかでは最短撮影距離の短さで1,2を争うレベルであったと言えます。

Skoparexは1960年から1969年まの9年間で6万本強が生産されたということです。1969年にはVoigtlanderはZeiss Ikonに吸収合併されて消滅しますが,ブラウンシュヴァイクの工場は操業を続けます。SkoparexはZeissのICAREXやSL706用レンズとしてマウントをICAREXやM42に変更されます。レンズ構成はBessamatic時代の5群6枚のレトロフォーカス型であることに変わりはなかったようですが,光学設計は微妙に変更されているようです。したがって,同じレンズ銘でもVoigtlander時代とZeiss時代では異なる描写となっているようです。その後,1972年にはZeis Ikonのカメラ事業とVoigtlanderがRolleiに移譲され,RolleiからColor Skoparex銘のレンズがリリースされます。

1981年にはそのRolleiも倒産し,Voigtlanderの商標は別の会社に移譲され,現在は日本のコシナが商標を使っています。コシナからはColor Skopar銘のレンズはでていますが,Skoparex銘のものはないようです。だからどうってこともないのですが,コシナがSkoparex銘を使わない理由は少し気になります。

この個体は最短撮影距離が40cmの後期型でシリアル番号が700万番台なので,Voigtlanderとして最後期の1965から1970年の間に製造された個体であると考えられます。この頃のVoigtlanderのシリアル番号は1年におおよそ20万づつ増えていることを考えると,この個体は1967年ころの製造ではないかと推察されます。

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